Glycogen グリコーゲン

10-8-2017 Last update

 

このページは グリコーゲン @本家UBサイト に恒久的に移転しました。このページもネット上に残っていますが、最新の情報はリンク先を参照して下さい。

 


  1. 概要: グリコーゲンとは
  2. グリコーゲンの分解
    • Glycogen phosphorylase
    • Phosphoglucomutase
    • Transferase/α-1,6-glucosidase
    • G6P の運命 - Glucose 6-phosphatase
    • 分解の制御: See glycogen phosphorylase
  3. グリコーゲンの合成


概要: グリコーゲンとは

グリコーゲン glycogen とは,グルコース glucose が α-1,4- および α-1,6-グリコシド結合 glycosidic bond によって重合した高分子である(図, 文献 1)。動物の主要な貯蔵糖質である。

 

> α-1,6-glycosidic bond が入るところで分岐する(2)。

: 分岐はおよそ 10 のグルコースにつき 1 回入る。

: α-グリコシド結合は,セルロースを構成する β-グリコシド結合よりも折れ曲がっている。

: ゆえにセルロースはグリコーゲンよりも繊維状である。

: 枝分かれのメリット → 溶解度と分解の効率が上がる

 

> 哺乳類では,主なグリコーゲン貯蔵組織は肝臓および骨格筋である(2)。

: 細胞質に直径 10 - 40 nm の顆粒の形で存在する。


グリコーゲンの分解

グリコーゲンの分解は,以下の 3 つの段階から成る(2)。4 つの酵素 enzyme が必要である。

 

  1. グリコーゲンからグルコース-1-リン酸 glucose-1-phosphate (G1P) が遊離する。
  2. グリコーゲンは,さらなる分解のために構造変化を起こす。
  3. G1P がグルコース-6-リン酸 glucose-6-phosphate (G6P) に変換される。

 

グリコーゲンホスホリラーゼ

グリコーゲンホスホリラーゼ glycogen phosphorylase は,グリコーゲンに無機リン Pi を付加して G1P を遊離させる(1,図は文献 3)。この酵素は,リン酸化と AMP による制御を受けている。詳細はリンク先を参照のこと。ホルモンなどによるグリコーゲン分解の制御についても,glycogen phosphorylase のページでまとめている。

 

 

Glycogen + Pi  →  Glucose-1-phosphate + Glycogen (1 残基短い)

 

 

 

 

G1P は非還元末端(Carbon 4 の OH 基が残っている側) から遊離する。

 

> 切り取る際に,なぜわざわざリン酸化するのか? -  いくつかのメリットがある(2)。

: 解糖系に入る際に,ATP を消費しなくてすむ。

: グリコシド結合を加水分解すればグルコースが得られるが,解糖するには ATP でリン酸化しないといけない。

: エネルギー準位の近いグリコシド結合とリン酸エステル結合を使えば,ATP のかわりに Pi でリン酸化可能。

: 細胞内に豊富にある Pi を有効利用しているとも言える。

: さらに,筋肉の場合,グルコースが遊離するとトランスポーターを通って細胞外に出てしまう。

: G1P ならトランスポーターがないので,自分で分解に回せる。

 

> この反応を達成するためには,活性部位に水を排除しつつ Pi を引き込まねばならない(2)。

: これを可能にするメカニズムが構造解析で詳細に調べられている。

 

ホスホグルコムターゼ

G1P を G6P に変換する酵素は ホスホグルコムターゼ phosphoglucomutase である(2)。ムターゼ mutase は英語では [mjuːteiz] と発音し,リン酸基などの分子内転移を触媒する酵素のことをいう。

 

解糖系の phosphoglycerate mutase (PGM) と混同しないように注意すること。

 

トランスフェラーゼと α-1,6-グルコシダーゼ

Glycogen phosphorylase は α-1,6-グリコシド結合を切ることができない。また,α-1,6-グリコシド結合による分岐があると,その 4 残基手前で α-1,4-グリコシド結合の切断も止まってしまう(2)。

 

その場合,transferase が 3  つの残基を下の図のように移し替えることで,α-1,4-グリコシド結合が切断されるようになる。1 個だけ残った α-1,6-グリコシド結合による分岐は,α-1,6-glucosidase で切断される(1)。これは加水分解であり,G1P でなくグルコースが生じる。

 

 

> Transferase と α-1,6-glucosidase は,1 本のポリペプチド上に存在する bifunctional enzyme である(1)。

: 解糖系フラックスを調節する PFK2 も kinase と phosphorylase の bifunctional enzyme である。

 

G6P の運命 - glucose 6-phosphatase

 G6P は解糖系の中間代謝産物であるとともに,ペントースリン酸経路の出発点でもある。G6P は,以下の 3 通りのパターンで代謝され得る(2)。

 

  1. 解糖系でピルビン酸まで代謝される。
  2. 解糖系を逆行し,グルコースになる。この反応は主に肝臓で起こり,glucose 6-phosphatase によって触媒される。この酵素は,ほぼ肝臓のみで発現している。
  3. ペントースリン酸経路で代謝される。この経路は NADPH とリボース ribose の類縁体を合成するための経路である。

 

 


グリコーゲンの合成

グルコースをグリコーゲン鎖の末端に付加するためには,uridine-diphosphate (UDP) と結合させ,活性化された状態にしなければならない(2)。UDP-glucose はグルコース-1-リン酸 glucose-1-phosphate (G1P) と UTP から作られる。

 

Glucose-1-phosphate + UTP  →  UDP-glucose + PPi

 

リン酸基が 2 つ外れることに注意する。グリコーゲン合成は

 

Glycogen +  UDP-glucose  →  Glycogen (1 残基長い) + UDP

 

である。この反応は グリコーゲン合成酵素 glycogen synthase に触媒される(2)。UDP は,ATP のリン酸基を使って UTP にリサイクルされる。

 

 

> Glycogen synthase は,4 残基以上の既存の glycogen を伸長する酵素である(2)。

: α-1,4-グリコシド結合のみを作る。α-1,6-グリコシド結合による枝分かれは branching enzyme が作る。

 

> Glycogen synthase は PKA および glycogen synthase kinase (GSK) にリン酸化され,不活性化する(2)。

: グリコーゲン分解の glycogen phosphorylase は,PKA によって活性化する。

: つまり,PKA は 合成の停止分解の開始 を同時に行う。

 

> GSK はインスリンによって活性化される(2)。


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References

  1. パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=611992
  2. Berg et al. Biochemistry: 使っているのは 6 版ですが 7 版を紹介しています。
  3. By Biochemnerd1 - Own work, CC BY 3.0 us, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15226222