アラニン,alanine, Ala, A

3-18-2017 Last update

 

このページの内容は,徐々に アラニン @本家UBサイト に置き換えていきます。このページもネット上に残っていますが,最新の情報はリンク先を参照して下さい。

 


  1. 概要: Ala とは
  2. 生合成
  3. 分解
  4. 血中 Ala 量
  5. NMR による検出
    1. 詳細は プロトン NMR による Ala の検出



概要: Ala とは

アラニン Ala は側鎖に CH3 をもつアミノ酸で(右図),以下のような特徴をもっている。

 

  • 糖原性アミノ酸で,乳酸 lactate とともに肝臓での糖新生 gluconeogenesis の主な原料である(3)。
  • 解糖系 glycolysis の最終産物であるピルビン酸 pyruvate から合成される。
  • 解糖の最終酵素ピルビン酸キナーゼ PK に結合し,活性を阻害する。
  • アミノ酸分解の際,肝臓へ窒素を輸送する働きをする。


生合成

13C で標識したピルビン酸 pyruvate をマウスに注射する実験から,Ala はピルビン酸から直接合成されることが明らかになっている(4)。 TCA 回路 との関係は以下の図である。

 

好気的条件下ではアセチル CoA に代謝されるピルビン酸が,条件によって Ala に変換される。

 

低酸素 hypoxia のときにこの反応は多く起こるようである。

 


グルコース - Ala サイクル

筋肉は,分岐鎖アミノ酸(BCAA)を分解してエネルギー源にすることがある(1)。このとき,アミノ基の窒素はアンモニアを形成し有害なため,尿素にして排出したいのだが,筋肉には尿素回路が存在しない。したがって,窒素を尿素回路のある肝臓まで輸送しなければならない。

 

ピルビン酸と NH4+ から Ala を合成し,血液 blood を介して肝臓に輸送,肝臓で再びピルビン酸と NH4+ に戻して尿素にするというサイクルを glucose - alanine cycle という。

 

激しい運動の結果筋肉で生じる乳酸 lactate を肝臓に運び,糖新生 gluconeogenesis の原料にする Cori cycle と似ている。

 


分解

Alanine は,アミノ基 NH2 を α-ケトグルタル酸に移す transamination によってピルビン酸になり,そこから各種の代謝経路に乗って代謝される(3)。下の図で,R = CH3 と考える。

 

グルタミン酸に移されたアミノ基は,グルタミン酸デヒドロゲナーゼなどの作用によって NH4+ として遊離し,尿素回路で尿素 urea になって排出される。

 

Ala は,ピルビン酸 - オキサロ酢酸 - PEP と変換されて,糖新生 gluconeogenesis によってグルコースになることができる。つまり 糖原性アミノ酸 である。

 


血中 Ala 量

> ヒトでは Ala と Val のみが血液中に mM オーダーで存在し,NMR で検出される(1)。

> Atlantic salmon で,1 - 2 週間のハンドリングストレスにより血中量が増加する(2R)。

> ヒトは肉食で尿中 Ala 量が増大する(5R)。


NMR による検出

13C NMR

13C NMR では,176.5 ppm 前後に Ala-C1 のピークが認められる(4)。

 

なお,右の図は上から PEPCK ノックアウトマウス,飢餓状態のマウス,給餌されたマウスに 13C ピルビン酸を注射し,肝臓抽出物を 13C NMR にかけたものであり,飢餓状態ではピルビン酸から合成される Ala 量が低下することがわかる。


1H NMR

プロトン NMR では,以下の位置にピークが現れる。詳細はプロトン NMR による Ala の検出 を参照のこと。

Proton

Chemical shift (ppm) in D2O

Multiplicity Comments Ref
Ala-H2 (CH の H) 3.7680 q H2O 中では 3.7746 6
Ala-H3 (CHの H) 1.4655 d H2O 中では 1.4667 6

コメント: 0

References

  1. Nicholson et al. 1984a. Proton-nuclear-magnetic-resonance studies of serum, plasma and urine from fasting normal and diabetic subjects. Biochem J 217, 365-375.
  2. Karakach et al. 2009a. 1H-NMR and mass spectrometric characterization of the metabolic response of juveline Atlantic salmon (Salmo salar) to long-term stress. Metabolomics 5, 123-137.
  3. Berg et al. Biochemistry: 使っているのは 6 版ですが 7 版を紹介しています。
  4. Merritt et al. 2011a. Flux through hepatic pyruvate carboxylase and phosphophenolpyruvate carboxykinase detected by hyperpolarized 13C magnetic resonance. PNAS 108, 19084-19089.
  5. Holmes et al. 2008a. Human metabolic phenotype diversity and its association with diet and blood pressure. Nature 453, 396-400.
  6. Govindaraju et al. 2000a. Proton NMR chemical shifts and coupling constants for brain metabolites. NMR Biomed 13, 129-153.