アラニン Ala は側鎖に CH3 をもつアミノ酸で(右図),以下のような特徴をもっている。
13C で標識したピルビン酸 pyruvate をマウスに注射する実験から,Ala はピルビン酸から直接合成されることが明らかになっている(4)。 TCA 回路 との関係は以下の図である。
筋肉は,分岐鎖アミノ酸(BCAA)を分解してエネルギー源にすることがある(1)。このとき,アミノ基の窒素はアンモニアを形成し有害なため,尿素にして排出したいのだが,筋肉には尿素回路が存在しない。したがって,窒素を尿素回路のある肝臓まで輸送しなければならない。
ピルビン酸と NH4+ から Ala を合成し,血液 blood を介して肝臓に輸送,肝臓で再びピルビン酸と NH4+ に戻して尿素にするというサイクルを glucose - alanine cycle という。
激しい運動の結果筋肉で生じる乳酸 lactate を肝臓に運び,糖新生 gluconeogenesis の原料にする Cori cycle と似ている。
Alanine は,アミノ基 NH2 を α-ケトグルタル酸に移す transamination によってピルビン酸になり,そこから各種の代謝経路に乗って代謝される(3)。下の図で,R = CH3 と考える。
グルタミン酸に移されたアミノ基は,グルタミン酸デヒドロゲナーゼなどの作用によって NH4+ として遊離し,尿素回路で尿素 urea になって排出される。
Ala は,ピルビン酸 - オキサロ酢酸 - PEP と変換されて,糖新生 gluconeogenesis によってグルコースになることができる。つまり 糖原性アミノ酸 である。
> ヒトでは Ala と Val のみが血液中に mM オーダーで存在し,NMR で検出される(1)。
> Atlantic salmon で,1 - 2 週間のハンドリングストレスにより血中量が増加する(2R)。
> ヒトは肉食で尿中 Ala 量が増大する(5R)。
13C NMR では,176.5 ppm 前後に Ala-C1 のピークが認められる(4)。
なお,右の図は上から PEPCK ノックアウトマウス,飢餓状態のマウス,給餌されたマウスに 13C ピルビン酸を注射し,肝臓抽出物を 13C NMR にかけたものであり,飢餓状態ではピルビン酸から合成される Ala 量が低下することがわかる。
プロトン NMR では,以下の位置にピークが現れる。詳細はプロトン NMR による Ala の検出 を参照のこと。
Proton |
Chemical shift (ppm) in D2O |
Multiplicity | Comments |
Ref |
Ala-H2 (CH の H) | 3.7680 | q | H2O 中では 3.7746 | 6 |
Ala-H3 (CH3 の H) | 1.4655 | d | H2O 中では 1.4667 | 6 |
Govindaraju et al. 2000a. Proton NMR chemical shifts and coupling constants for brain metabolites. NMR Biomed 13, 129-153.