8-3-2015 updated
N-アセチルアスパラギン酸(NAA)は,脳内に大量に存在するアミノ酸で,神経細胞 neuron のミトコンドリアで作られ,軸索 axon から細胞外液へ一定の割合で流出する。神経細胞が自らの浸透圧環境を守るために分泌していると考えられている。
NAA の量は,神経細胞の密度やミトコンドリア機能の指標となる。
> 腫瘍細胞はNAAを合成しないため,脳のMRSを取ると腫瘍を含む領域では NAA のピークが見えなくなる(1)。
: ただし,通常MRSで調べる範囲は腫瘍のサイズよりも大きいので,ピークの低下として現れる。
> 新生児虚血,脳挫傷,myelinolysis 直後,ミトコンドリア脳症などでは NAA ピークが小さい(1)。
> H-MRS では 2.0 ppm に明瞭なピークとして観察される(1)。
> 低酸素耐性の強い魚 crucian carp では,1-7日の無酸素 anoxia によって脳の NAA が減る(2R)。
: 無酸素による神経傷害の可能性が指摘されている。
: もしくは,ミエリン鞘合成のための酢酸 acetate ,脂質の供給源として働いているかも。
: NAAを合成する acetyl-CoA-l-aspartate-N-acetyltransferase はミトコンドリア酵素である。
: ミトコンドリアの機能不全が起こっている可能性もある。
1. 今西,徳原,小谷 (2009). 心から納得・理解できる MRI 原理と MRS
イラストを多様した,わかりやすい MRI と MRS の本。基本的に見開きの左が文章,右がイラストという構成。 MRS および MRS で検出できる代謝産物について詳しく解説している本は,日本語では少なく貴重である。NAA や クレアチンといった代謝産物の機能と測定法の概要が書かれている。 もう一つの特徴は,MRI 原理の説明に回転座標系が使われていないこと。そのため,他の教科書とはちょっと異なる説明の仕方になっている。MRI の原理を理解するのは難しいので,色々な方向から眺めてみるという点でもお勧めの一冊である。私が T1, T2 relaxation を理解できたのはこの本のおかげ。 |
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