2019/01/13 Last update
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グルコースは 7 つの non-exchangable protons をもつため,1H NMR スペクトルは複雑なパターンを示す。さらに,水溶液中ではα-アノマーと β-アノマーが平衡状態で存在する ため,両者のピークが観察される。
水溶液中では,α-アノマー(α-グルコース)が 36%,β-アノマー(β-グルコース)が 64% で,直鎖状グルコースはほとんど存在しない(2)。
グルコースのケミカルシフト値は以下のとおり(1)。DSS-trimethyl singlet を標準(0 ppm)にしたときの値である。測定条件は 35℃,pH 7-8,Multiplicity は 250 MHz の磁場で観察されたもの。
1CHのピーク(α は 5.216 ppm,β は 4.630 ppm)が比較的観察しやすいが,後者は水の周波数に近く,water suppression をしていると見えない。
α-アノマー
Group | Shift (ppm) in D2O | Multiplicity | J (Hz) | Connectivity |
1CH | 5.216 | Doublet | 3.8 | 1-2 |
2CH | 3.519 | DD | 9.6 | 2-3 |
3CH | 3.698 | Triplet | 9.4 | 3-4 |
4CH | 3.395 | Triplet | 9.9 | 4-5 |
5CH | 3.822 | Multiplet | 1.5 | 5-6 |
6CH | 3.826 | DD | 6.0 | 5-6' |
6'CH | 3.749 | DD | -12.1 | 6-6' |
β-アノマー
Group | Shift (ppm) in D2O | Multiplicity | J (Hz) | Connectivity |
1CH | 4.630 | Doublet | 8.0 | 1-2 |
2CH | 3.230 | DD | 9.1 | 2-3 |
3CH | 3.473 | Triplet | 9.4 | 3-4 |
4CH | 3.387 | Triplet | 8.9 | 4-5 |
5CH | 3.450 | Multiplet | 1.6 | 5-6 |
6CH | 3.882 | DD | 5.4 | 5-6' |
6'CH | 3.707 | DD | -12.3 | 6-6' |
NMR のピークは,条件によっては定量性を示すため,グルコースのピーク面積からその量を測ることが可能である。ただし,一般に以下のような問題点がある。
> 最も見やすい α-アノマーH1(1H-NMR で 5.22 ppm)は,水のピークに近くベースラインが平らでない。
> α-アノマーとβ-アノマーが,試料溶液中で平衡状態であることの確証がない。
> 蟻酸塩 formate を外部標準として,血糖値を測定した報告がある(3R)。
: NMR で求めた値は,生化学的手法で測定した値よりも約 20% 低かった。
: NMR で血漿 plasma,生化学的手法で血清 serum を使ったためと考えているが,そんなに違うものか。
: なお,血糖値の自動測定装置には ± 10% 程度の誤差が見込まれるらしい。