コレステロール cholesterol は,4 個の炭素環を基本骨格とするステロイド steroid の一種である(右図, 5)。5 員環に炭素鎖が結合しており,その反対側にヒドロキシル基 -OH がある。
以下のような重要な生化学的特徴をもっている。
原核生物 prokaryotes はコレステロールをもたないが,それ以外の全ての生物に存在すると考えられている。神経細胞で含量が高く,ときには膜脂質の 25% を占める(1)。
コレステロールは,上の図で左下に位置する OH 基が高い極性をもち,かつ右上の炭化水素鎖部分の極性は低いという両親媒性 の分子である。つまりリン脂質などと同じで,このために生体膜の主成分として使われている。
生体膜では,コレステロールは下の図(文献 4 より)のマル 7 で表されるように,リン脂質と平行に,なかば埋もれるようにして膜の中に含まれている。コレステロールの大きさは約 1.5 nm ほどであり,これがややリン脂質よりも小さいためにこのような配置になる。もちろん,コレステロールの極性もこの配置に重要である。
とくに,不飽和脂肪酸は分子が折れ曲がっているので,細胞膜内にスペースが生じる。コレステロールはそのスペースに入り込み,膜の構造強化に寄与している。
コレステロールは生体膜の主成分であるほか,リポタンパク質 の成分として 脂質の輸送にも関わっている。つまり,右下の図()のように貯蔵脂質であるトリアシルグリセロールを取り囲み,リポタンパク質としてこれを水に溶ける形にすることで,血液 blood を介した脂質の輸送を可能にしているのである。
> 総コレステロール量は,たとえば食後のラットで 106 mg/dl(2)。
: なお,ニジマスでは 303 mg/dl で,血中総脂質量(1940 vs 685 mg/dl)とともに約 3 倍高い。
> 血液中の総コレステロールが 240 mg/dL よりも高いと,動脈硬化の発症率が急激に上昇する(2)。
> 生体に必要なコレステロールの約半分は,生合成されたものである(5)。
: およそ 700 mg が一日に生合成される。
: ヒトでは,肝臓と腸がそれぞれ 10% ずつ生合成するが,おそらく全ての有核細胞で生合成が可能である。
: 生合成は,細胞質および小胞体で起こる。
岡崎 2010a (Review). LDL コレステロールとは? その測定法の問題点と解決策は? オレオサイエンス 10, 471-475.