核磁気共鳴画像法 MRI は,磁場内におかれたプロトン(水素原子核)の密度と,その状態を画像化する方法である。血流動態を可視化する機能的 MRI (functional MRI, fMRI) に対して,構造的 MRI (structural MRI, sMRI) と言うこともある。
ヒト頭部のMRI画像(6)
理解を助けるために,色々な言い回しを載せておく。
MRI で撮像する範囲を FOV (field of view) といい,単位は長さ(cm など)である。
MRI のデータは,ボクセル voxel (右図のような立方体)を単位として構成される画像である。一つの断面を写真のように示すのが一般的であり,この場合は単位はピクセル pixel になる。
たとえば,ピクセルの大きさが 1 mm 角,画像が 100 x 100 ピクセルのときには,FOV は 10 cm x 10 cm である。
ヒトの sMRI では,基準画像に合わせ込み registration を行った後のボクセル数は,サイズ 1.5 mm 角,121 (横) x 145 (縦) x 121 (スライス) = 2,122,945 voxels が一般的である(4)。
ヒトの fMRI ではボクセル数はこれより少なく,64 (横) x 64 (縦) x 49 (スライス) = 200,704 voxels 程度である。ただし,fMRI の場合は経時的な測定を行うため,さらに100点程度の時間の次元が加わる(4)。
ボクセルのイメージ(7)。
MRI でも DTI でも,ボクセルが検出の最小単位である。したがって,一つのボクセル内に含まれる座標は全て同じ値をもっている。
シグナル/ノイズ比(SNR, signal to noise ratio)は,
SNR = 信号強度の平均値/ノイズの標準偏差
SNR = k * (voxel volume) * (number of repetition)1/2 / (bandwidth)1/2
などの式で表される値である(3)。なお,k は定数,number of repetition は計測回数,bandwidth は帯域幅(周波数の範囲,単位はHz)である。結局のところ,実際に測定してみないと分からないことが多い。
隣接する2つの点を個別かつ明瞭に識別する能力。実際には,識別できる距離のうち最も短いものを 空間分解能 spatial resolution ということが多い。ただしこの定義は機器によって様々であり,例えば望遠鏡では角度で規定されている。
「もっとも短い」ことを含めていない説明が多いが,これを考えないと機器の性能としての空間分解能の意味がなくなるため必要であると思われる。一般的な画像診断機器においては,CT > MRI > PET である。
空間分解能を高くすると,SNR は低下する(3)。
> ラット脳の ex vivo 構造的 MRI で,0.16 x 0.16 x 0.16 mm3 の解像度が得られている(5)。
: 9.4 T, 3D multiple-spin echo DW sequence. TR = 700 ms, TE = 30 ms.
得られた画像はそのまま解析に使われるわけではなく,一般に以下のような前処理が必要である(4)。
主に頭位置補正(head motion correction)とスライス補正(slice-timing correction)がある(4)。いずれも fMRI で使われる。
対象が fMRI scan 中に動いた場合,その位置を補正して解析を行う必要がある。これが head motion correction である。平行移動 (x, y, z) と回転 (pitch, roll, yaw) の6つのパラメーターから成る剛体変換 rigid body transformation が使われる(4)。
また,fMRI では1スライスの撮影に数秒を要するため,スライス間で時間のずれが生じる。これを補正するのが slice-timing correction である(4)。
画像データを灰白質 gray matter, 白質 white matter, 脳脊髄液 cerebral spinal fluid に分割することをセグメンテーション segmentation という(4)。
さらに細かく,解剖学的な区分を与えることも segmentation と呼ばれる。
脳の形は対象者(個体)ごとに異なるので,比較するためには標準画像への位置合わせを行う必要がある(4)。これを spatial normalization という。Registration という表現もある。
ボクセル値の過度な変動を抑えるため,値の平滑化 smoothing が最終的に行われる(4)。ガウス型関数による畳み込みなどが使われる。
DWI, diffusion weighted imaging, 拡散強調画像
正常な組織では,細胞と細胞の間に間質があり,間質の水分子はかなり自由に動いている。一方,自己融解などによって細胞が肥大すると,細胞内の水分子も,その周囲の間質の水分子も自由に動けなくなる。このような「動けない水分子」を画像化する方法が DWI である。急性の脳虚血診断法として重要である。
DTI, diffusion tensor imaging
DWI の発展型。
Manganese-enhanced MRI, MEMRI
Mnイオンが興奮する細胞に取り込まれることを利用して,脳の活性化部位を特定する手法。