BOLD 信号の解釈の根源的な問題の一つが,BOLD 信号から脳の活動を予測する方法の確立である(8)。Neurovascular coupling とも呼ばれる。
脳の活動には,以下のように複数の段階があり,それぞれ測定方法が異なる。一番知りたいのは神経細胞の発火パターンであり,これを血液のパラメーターである BOLD からどう予測するかということがポイント。
1. 神経細胞 neuron の発火 firing の頻度
脳の活動を最も反映するが,正確に測定するためには脳に電極を刺さねばならず,ヒトを対象とした研究は難しい。
2. 神経細胞の ATP 消費速度
ATP は基本的な代謝や発火など,多くのプロセスで神経細胞のエネルギー源になる。発火が多くの ATP を消費するプロセスであることがわかっているので,この値は 1 をある程度反映する。
3. 神経細胞のグルコース代謝速度
神経細胞では,ATP はグルコース glucose を主要なエネルギー源として産生される。したがって,グルコースが代謝(酸化)される速度は,2 をある程度反映する。
4. 神経細胞の TCA flux
5. 血流の変化: BOLD 信号に最も近い。
Firing を頭蓋骨の外の電極でモニターした脳波 EEG の測定は,神経の活動を全体的に捉えるために有効な手段で,ヒトでも容易に測定することができる。