12-14-2016 updated
動物の脳 brain は,神経細胞 neuron 同士が軸索 axon で繋がってネットワークを構成している。特定の領域からまとまって軸索が投射されているとき,軸索の束は白っぽい構造として見ることができる。細胞体を多く含む灰色の灰白質 gray matter に対して,軸索の多い部分は白質 white matter と呼ばれる。
白質は脳の特定の場所を連結 connect する構造であり,白質の分布とそれによる連結を総体的に表現する言葉が structural connectivity である。
一方,1995 年,ヒトの脳で離れた場所の fMRI シグナルが 0.1 Hz 程度の低周波数で同調していることが報告された(1)。当初は呼吸などによるアーティファクトである可能性も指摘されたが,現在では,fMRI シグナルの同調は機能的な意味をもつと考えられている。これを functional connectivity という。
Hebb's rule" "units that fire together, wire together"
物理的に神経細胞の投射で繋がっている領域もあるが,そうでない領域もあり(4),functional connectivity が生じるメカニズムには不明な点が多い。
> ジャグリングの練習で,関係すると思われる領域の white matter による連結が強くなるという論文(5R)。
: Healthy adult human brain で,トレーニングによって WM の構造が変わるという初めての報告。動物では報告あり。
: 同じ対象(ヒト)を用いて,トレーニングの前後で比較した longitudinal study であることも特徴である。
: ジャグリングができるグループ vs できないグループの cross-sectional study よりトレーニングの効果である可能性が高い。
: n = 24 のグループで,トレーニング前後で比較。対照群(n = 24)は,トレーニングなしで同じ時期で比較。
: DTI, right posterior intraparietal sulcus (IPS) で FA が増大。予測された場所であった。
: 同じ領域で gray matter density も上がっていた。こちらは VBM で解析。
: さらにトレーニングなしで 4 週間後にも測定。FA は高く維持されていた。
: ただし,FA はジャグリングの成績,gray matter change とは相関しなかった。
予め特定の voxel を指定して,その voxel と他との相関を調べる seed-based connectivity と,総当たりで相関を調べる
functional connectivity density mapping の 2 つに分けることができる。Connectivity は,とくに刺激を与えない resting
state で測定されることが多い。
また,相関 correlation の閾値を設けない intrinsic connectivity density (ICD) も提唱されている(6)。
fMRI データは右図(文献 2)のような画像として表されるが,その実体は測定単位である voxel の座標 (x, y, z) と,その voxel のシグナル値 (a) および時間 t を使って表される (x, y, z, a, t) という行列である。
Seed-based connectivity は,ある voxel (seed region of interest, ROI) を設定し,その voxel の値と他の領域の相関を調べるものである。
ROI は,一つの voxel であったり,一つの領域であったりと様々だが,a priori に設定されるので,その領域の選定には常に疑問の余地がある。
予め基準となる seed (a priori ROI) を決めずに,脳全体の connectivity について議論したいときには FCD map が使われる(3)。
FCD では,とくに一つの voxel を選ぶことなく,それぞれの voxel について他の全ての voxel との相関を計算する(一定の閾値を設ける)。各 voxel の FCD 値は,相関して変動する他の voxel の個数の指標となる。
FCD 値が高いほど,脳全体との相関が高いことになる。このような領域は ハブ領域 hub (or functional hub) と呼ばれ,脳の各部分の活動を結びつける重要な役割を果たしていると考えられている。
右の図(3)は,さまざまな地域のヒト合計 979 名を対象に resting fMRI を行い,その結果から作られた FCD map を比較したものである。
程度の差はあるが,posterior cingulate/ventral precuneus (BA23/21) に共通のハブ領域があることが分かった。
この論文では,FCD map について以下のように述べている。
なお,FCD という概念を提唱したのはこの論文が初めてではなく,この論文は従来よりも 1000 倍早い計算方法を提唱したものである。
> 2 つの領域が直接繋がっているのか,その他の領域を介して繋がっているのかわからない(4)。
> 因果関係を表すものではない。
> 多くの論文では,scan で得られたデータを平均してマップを作っている(6)。
: これは,scan 中に connectivity が変化しないという前提に基づいているが,その確証はあまりない。
まとまってきたら整理します。
> Co-activation pattern (何かが conventional correlation と違うらしい) をラットで調べた論文(6)。
"select individual rsfMRI frames with the highest seed signal intensity and decomposes these frames into spatially reppeatable co-activation patterns (CAPs)." という説明がある。
: 上位 15% の BOLD 値を示す voxel のみを使っているようだ。
: Seed-based; infralimbic cortex (IL) 17 voxels, primary somatosensory cortex 12 voxels.
: Long-Evans rat, awake and 1.5% isoflurane anesthesia.
: 麻酔をかけると,IL をシードにしたときの connectivity は低下するが,S1 では低下しない。
: 麻酔は,感覚機能ではなく認知機能を阻害することを示している。
: CAPs 法では,connectivity を k-mean cluster 法で分解することができるらしい。
: この論文では,3 つのクラスターに分解し,それぞれ異なる場所と連結されていることを示している。