正常な組織では,細胞と細胞の間に間質があり,間質の水分子はかなり自由に動いている。一方,自己融解などによって細胞が肥大すると,細胞内の水分子も,その周囲の間質の水分子も自由に動けなくなる。このような「動けない水分子」を画像化する方法が DWI
である(1)。急性の脳虚血診断法として重要である。
磁場の中にある原子核(磁性核 magnetic nucleus)を励起させるために照射するパルスを ratio-frequency (RF) パルスという。RFパルスを浴びた原子核はエコー信号を発し,これを検出することでNMRやMRIのデータが得られる。パルス照射からエコー信号を受け取るまでの時間を echo time (TE) といい,通常 10 ms のオーダーである。
-> 詳細はNMRの原理を参照
ここで,パルス照射からエコー信号を受け取るまでの間に磁場に変化が生じると,エコー信号にも影響が出ることが予想される。これが DWI 撮影の原理である(1)。
- DWI では,T2-weighted image のパルス系列を基本とし,180˚パルスの前後に検出したい水分子の動きの方向に傾斜磁場(MPG; motion probing gradient)をかける。
- 水分子が MPG の中を動くと,エコー信号を出さなくなる。
- 死んだ細胞は浸透圧で膨れ上がり,細胞質の水分子が動きにくくなる。このような場所が,DWI では高シグナルの場所として検出される。