fMRI は,MRI の技術を応用して脳 brain の血流動態 hemodynamic changes を可視化する方法である。右の図のような画像が得られる。
最初の fMRI 論文は1991年に発表された。それ以来,fMRI に関する論文は1日に3報の割合で出版されており,2008 年現在では19,000に及んでいる(1)。
fMRI は,当初ヘモグロビンの酸化度を利用した BOLD 信号に基づいた画像処理法として開発されたため,一部では BOLD の別名というような説明が見受けられる。しかし,脳の血流動態は,BOLD だけでなく tissue perfision や blood-volume changes を MRI で測定することによっても検出できる(1)。
したがって,BOLD は fMRI とイコールではなく,fMRI の一手法として理解するのが妥当と考えられる。
BOLD と fMRI の関係に関する記述を,いくつか論文から拾ってみる。
文献 1 では,fMRI のメリットとして以下の点を挙げている。時間解像度は数秒 〜 1秒以下である(2)。
また,fMRI のデメリットとして,血流動態を測定することの限界が指摘されている(1)。すなわち,
1 は,たとえばある実験区と対照区で比較を行うときに,実験中の血中酸素濃度などの影響も出てしまうということだろうか?
2 は,たとえばある部位に含まれる興奮性と抑制性の神経が両方活性化したとき,fMRI で測定されるのは両方の神経が必要とする血流の和である。しかし,興奮性/抑制性の神経がどのような割合で活性化されているかによって,fMRI で得られる数値の意味は全く異なってしまう。
fMRI に限らず,多くの脳研究では「脳の各部分がそれぞれの機能を担っており,その集合として意識が存在する」という前提に立っている。
仮に,脳のネットワーク全体で単一の機能を果たしているならば,部位ごとに脳の血流動態を可視化するという fMRI は意味のない手法になってしまう。幸いにも,現在までのデータはこの仮説を裏付けるものである(脳機能局在論 Wikipedia)。
fMRI 実験は大きく2つに分類することができる。
一つは task-based fMRI で,何らかの刺激(光,音などの感覚刺激,問題を解かせる,特定の画像を見せるなど)を与えて反応をみるものである。もう一つは resting-state fMRI で,刺激のない状態での血流動態をみるものである。両者の大きな特徴は以下の通り。