MAM は右図のような構造をもつ物質で,ソテツ類がもつ神経毒が分解されて生じる成分である。
メチル基 CH3 と,アゾキシ基 R-N=N(→O)-R (→O は,電荷の偏りがあるという意味。実際にはN+とO-の形になっている)をもつメタノールである。
妊娠中のラット母体に MAM を注射すると,子供の脳 brain の発生が阻害され,統合失調症 schizophrenia やてんかん epilepsy の症状を示すようになる(1)。この MAM rat は,疾患動物モデルとして利用されている。
室温では密度 1.17 g/ml の液体で,発ガン性をもつ(2)。-20℃で遮光保存する。
ソテツ類 cycad の種に2 - 4%含まれる毒性分 サイカシン cycasin は,酸性条件化で加水分解されるとメタノール,ホルムアルデヒド CH2=O,窒素,グルコースなどを生じる(1)。
また,β-グルコシダーゼによって加水分解されると MAM が生じる。この酵素の活性は脳で他の組織の約 500 倍(齧歯類の場合)高いので,おそらく MAM への曝露はモデル生物と同様に脳で影響が大きい。実際に,ソテツ類を食べる地方では,MAM などの神経毒性に由来すると考えられる神経変性疾患がみられる(1)。
> 文献 1 では,ソテツ毒に起因すると思われる以下のような疾患が挙げられている。
: 接することの多いチャモロの人々は,ALS やパーキンソン病にリスクが高い。
: ALS, パーキンソン病のヒトで,脳神経細胞の多核化が報告されている。分裂阻害の症状である。