2019/12/11 Last update
このページは カテコールアミン @本家UBサイト に恒久的に移転しました。いずれアドレナリンのページも作るかもしれません。このページもネット上に残っていますが、最新の情報はリンク先を参照して下さい。
関連項目
アドレナリンは副腎髄質ホルモンで,心筋を収縮させ,血圧および血糖値を上昇させる(1)。また骨格筋で解糖 glycolysis を促進し,肝臓では糖新生 gluconeogenesis を促進する。
低血糖 hypoglycemia 時に血中量が上昇する(2)。
神経伝達物質でもあり,延髄下部にアドレナリン作動性ニューロンの存在が確認されている(1)。
アドレナリンは 1895 年にキブルスキーによって他のカテコールアミンとの混合物として発見された。これは nadnerczyna と呼ばれた。これとは独立に,高峰譲吉らはウシの副腎からアドレナリンを発見し,1901 年に世界で初めて結晶化に成功した。
同時期に,アメリカ合衆国のエイベルはヒツジの副腎から分離した物質をエピネフリン epinephrine と名付けた。これはアドレナリンとは異なる物質であったが,高峰の死後,エイベルは高峰の研究は自分の盗作であると主張した。1960 年,エイベルの方式ではアドレナリンは抽出できないことが判明し,高峰の発見が再評価されつつある(1)。
現在ではアドレナリンもエピネフリンも同じ物質のことを指しているが,両者とも使われている。医薬系などで特定のルールがある場合もあるが,このページでは特に使い分けはしない。
アドレナリン受容体 β-adrenergic receptor (β-AR) は,7 回膜貫通型の受容体である(3)。蛇のようにうねりながら膜を貫通しているので,serpentine receptors とも呼ばれる。非常に大きな分子ファミリーである。
受容体にアドレナリンが結合した後のシグナルの流れは,概ね以下のようになる。
詳細は G タンパク質のページを参照のこと。
シグナルは G protein の GTPase activity によって収束する。これに加えて,アドレナリンシグナルの終了には以下の 2 つのタンパク質が関わっている(3)。
β-adrenagic receptor kinase (also called G-protein receptor kinase 2, GRK2) がリガンドと結合した受容体をリン酸化する。フリーの受容体はリン酸化しない。
リン酸化された受容体には,β-arrestin が結合して受容体による G protein の活性化を抑制する。
1. 河合良訓 監修 2005a. 脳単. 株式会社エヌ・ティー・エス.
監修のことばにも書かれているが,脳 brain は他の組織よりも構造が複雑である。それは,脳の領域が全体的に繋がっていて,区分がはっきりしていないためである。これに伴って用語にも混乱が生じており,たとえば脳幹 brain stem という単語が示す領域は文献によって異なっている (これもこの本に書かれていた)。したがって,良いアトラスを持っていることは脳について学習・研究するために非常に重要である。
この本は,ヒトの脳の様々な部位の名称が日本語と英語で対応づけて書かれていて,イラストも美しくわかりやすい。厚くはないが, 原著論文に出ている用語はほぼ網羅しているので,ぜひ手元に一冊置いておきたい本だ。