統合失調症 schizophrenia では,GABA の量が大脳皮質 cortex や海馬 hippocampus で低下するのが一般的である。
GABA が低下している脳領域では,グルタミン作動性ニューロン等の活性が上昇する。そのため,脳のネットワークがうまく機能しなくなり,認知能力の低下や幻覚などの症状を引き起こすものと考えられている。
統合失調症における GABA 系の異常は,parvalbumin を発現する GABA 作動性介在ニューロン(PV-positive GABAergic interneuron)でみられることが多い(2I)。このニューロンは,fast-spiking interneuron とも呼ばれる。
このニューロンは,グルタミン酸作動性ニューロンの細胞体 cell body または軸索起始部 axon initial segment に向いており,この神経の活動を強く制御している(2I)。
> 海馬 hippocampus の脳波は認知能力に重要であるが,これは GABAergic neuron に依存する(1I)。
: 海馬の gamma oscillations (20-80Hz) は,PV-positive GABAergic interneuron で作られる。
: 海馬に多く発現する α5GABAA 受容体は,シナプス以外の部分に局在しており,γ波の発生を制御。
: α5GABAA 受容体を阻害すると,統合失調症に似た症状が現れる。
> 死後のヒトで調べたところ,大脳皮質全体にわたって GAD-1 mRNA, GAD-67 protein 量が低下(2I)。
> 死後のヒトでの PV in situ hybridization では,PV mRNA は layer 3-4 を中心に局在(3)。
: 統合失調症では,分布が保たれたまま mRNA 量が50%程度低下している。
: 他の種類の介在ニューロン interneuron で発現するカルレチニン mRNA 量には変化なし。
: PV-positive interneuron における GAD67 mRNA 量も低下していた。