ケトン体 ketone body は,脂肪酸 fatty acid の不完全な酸化によって生じる代謝産物であり,アセト酢酸 acetoacetate, β-ヒドロキシ酢酸 BHB, アセトン acetone の総称である(2)。
ケトン ketone とは意味が異なるので注意すること。
ケトン体は,以下のような生化学的特徴をもっている。
アセチル CoA は,エネルギー代謝を考える上で中心となる物質である。なぜならば,主要な栄養源である 糖,アミノ酸,脂質は,主としてアセチル CoA を経由して代謝される ためである。
ここで TCA 回路 のページを見てみると,アセチル CoA が TCA サイクルに入るときには,オキサロ酢酸 oxaloacetate と 1 : 1 で結合する必要がある。したがって,細胞内にいくらアセチル CoA があっても,オキサロ酢酸と同じ量しか酸化することができない のである。 参考のため,右下に小さく TCA 回路の図を示しておく。
オキサロ酢酸は,TCA 回路でリンゴ酸から合成されるが,ピルビン酸からピルビン酸カルボキシラーゼの作用で直接合成することができる。この反応は,補充反応 anaplerosis と呼ばれる。
ところが,このピルビン酸は糖から供給されている。つまり,脂質を酸化してエネルギーを得るためには,脂質から得られるアセチル CoA と同じモル数のピルビン酸を糖から作る必要がある。
脂肪酸はアセチル CoA の単位が連なった高エネルギー物質であり,この分解が活発になると,しばしば糖からのピルビン酸,オキサロ酢酸の供給が追いつかなくなる。
飢餓 fasting または糖尿病 diabetes のとき,オキサロ酢酸からグルコースを合成する糖新生が活発になり,オキサロ酢酸不足に陥りやすい。なお,飢餓時には β 酸化が活性化するため,バランスはさらにアセチル CoA 過剰の方向へ向かう。
ケトン体は,このような状態で過剰となったアセチル CoA から合成される。
上記のように,ケトン体は余剰のアセチル CoA から合成される。3 分子のアセチル CoA が合成に関与するが,結果的には 2 分子からアセト酢酸が生じ,それが BHB またはアセトンに変換される(3)。この反応は,主に肝臓で起こる。
> 脳で UCP の発現を増大させる(2)。
> GABA 合成を促進するなどして,全体的に GABA の作用を活性化させる(2)。
> 軟骨魚類では,肝臓からの脂質動員 lipid mobilization がケトン体で行われる(1I)。
> 哺乳類でも,離乳前はケトン体が脳の主要なエネルギー源である(1D)。