統合失調症でみられる変化
統合失調症では,実際に発症(思春期から青年期が多い)する前から兆候がみられることが多い。したがって,これを指標に 発症前のリスクを評価し,予防的な治療を試みること は原理的に可能であるが,この予防策はまだ現実的ではない。
以下,発症前から現れる症状ごとにまとめる。多くは統合失調症患者やその周辺の人々(親,教師など)に対する聞き取りからのデータである。
> 精神病のリスクの高い集団を追跡調査し,発症した人としなかった人を比較,予測の可能性を探った論文(3)。
: 95 の報告を調べたメタ・アナリシスである。
: CHR-C (clinical high-risk converter, 結果的に発症した人), CHR-NC (non-converter, しなかった人)。
: いくつかの行動試験のうち,CHR-C は working memory task, visual learning で成績が悪かった。
: これらの試験の結果から,発症のリスクを見積もることが可能であろうという結論。
統合失調症患者における喫煙者,アルコール依存症患者,薬物使用者などの割合は健常者に比べて著しく高い。この問題には,複数の局面があり,重要な点は 因果関係がまだはっきりしていない ことである。
喫煙 smoking のページにも統合失調症との関連に関する項目があるので,そちらも参照のこと。
1. Self-medication hypothesis
とくに喫煙との関連で強調される仮説である。タバコに含まれるニコチン,アルコールなどが統合失調症の症状を軽減させるため,結果としてこれらを使う率が高くなるという考え方。
> 精神疾患 psychosis と大麻 cannabis の使用には,両方向の因果関係があるという論文もある(4)。
Positive and Negative Syndrome Scale の略で,Kay ら(1991)によって作成された評価尺度である(1)。30項目で構成されており,その内訳は陽性尺度7項目,陰性尺度7項目,それに総合精神病理尺度16項目からなっている。
> 文献2で使用されている薬は以下の通り。8週間の投与で,PANSSスコアの改善がみられている。
: Haloperidol, olanzapine, quetiapine, risperidone, zuclopenthixol, Mood stabilizers,
benzodiazepines, anticholinergics.
: さらに contrast hypersensitivity も改善したが,higher-level motion processingは変わらず。