血液 blood は,動物の体内を巡る主要な液体である。血液が管状の構造の中を流れている場合,この管を血管 blood vessel という。
> 循環血液量は,マウス 72 mL/kg,ラット 64 mL/kg である(1)。
血液の凝固,凝血 blood clotting は,一連の酵素 enzyme のカスケードによって引き起こされる素早い応答である(下図,3)。Coagulation ともいう。
Coagulation cascade は,intrinsic/extrinsic に大きく分けることができる。
Intrinsic pathway
Extrinsic pathway
これらの経路は最終的に合一され,以下のように fibrinogen から fibrin を作り出し,clot を作る。
Fibrin はセリンプロテアーゼである plasmin によって分解される。
Factor VIII 欠乏: Classic hemophilia (= hemophilia A) という病気の原因になる。
血液中には多様な代謝産物が含まれており,その量は生理状態によって変動する。これらを質量分析 mass spectrometry や核磁気共鳴 NMR によって網羅的に同定する手法をメタボロミクス metabolomics という。
「検査値で読む人体」では,様々な血液パラメーターの説明や,正常値の意味などが詳しく解説されている。古い本で安価に手に入るので,ぜひ参考にしたい。
> Insulin withdrawal および絶食条件下で,血液と尿の代謝産物量を NMR で測定した論文(4)。
: 大きい分子やアルブミンなどは除き,小分子の mM オーダーのものを測定する。
: ケトン体は全てメチル基をもつので,NMR のターゲットになる。
: 重水素を飲んでから測定。尿中にはもともとタンパク質が少ない。血液は過塩素酸で除タンパク質している。
: 水のシグナルが強いこと,アルブミンや immunogloblin を除ききれないことが問題だが,前報で対策済。
: アルブミン中の脂肪酸は NMR では見えない。リポタンパク質 lipoprotein 中の脂肪酸は検出できる。
: 絶食で血中グルコース glucose 濃度が低下し,ケトン体が徐々に増える。
: アミノ酸は,Val, Ala のみが血中に mM オーダーで存在するので,NMR で観測できる。
: Insulin withdrawal 後,血中グルコースおよびケトン体が増大,脂肪酸は徐々に低下する。
: 試料に standard を加えることで,定量も可能。
: 巨大分子と結合していたり,金属イオンと結合していたりすると,NMR では見えない。