大脳皮質の層構造

4-19-2014 updated

 

  1. 概要
  2. Layer 1 (zonal layer, molecular layer, 表在層,分子層)
  3. Layer 2 (external granular layer, 外顆粒層)
  4. Layer 3 (external pyramidal layer, 外錐体細胞層)
  5. Layer 4 (internal granular layer, 内顆粒層)
  6. Layer 5 (internal pyramidal layer, 内錐体細胞層)
  7. Layer 6 (multiform layer, 多型細胞層)
  8. その他
  9. Layer間の神経の繋がり(別ページ)

概要

General


ヒト大脳皮質

 

Wikipediaより転載。外側の灰色の濃い部分が大脳新皮質 cerebral neocortex であり,これは大脳表層の層構造をもつ部分として定義される。しばしば大脳皮質 cerebral cortex と省略して記載されることもある。詳しい説明はこちらへ。

 

大脳新皮質は,ニューロンの細胞体が密に集まっているため灰色がかって見え,灰白質 gray matterとも呼ばれる。これに対して,内側は樹状突起や軸索などの神経繊維が多く,白っぽく見える白質 white matterである。

 

大脳皮質は,以下に示す6層構造をもっている。この構造は脳全体にわたって存在し,基本的で重要な構造であることがわかる(3)。

 

しかし,たとえば primary moter area では最も発達しておらず,またprimary visual areaで最もはっきりしているなど,部位による違いも認められる(3)。


Lamina

ヒト,ラット,マウス大脳皮質の層構造。文献4より転載。AS, asymmetric synapses; SS, symmetric synapses.

 

 

 

#1


Layer 1 (zonal layer, molecular layer, 表在層,分子層)

Layer 1は以下のような特徴をもつユニークな層である。→ Layer 1の詳細へ 

> ニューロンの数が少ない。

: Rat occipital cortex (visual), parietal cortex (somatosensory), and frontal cortex (motor) (1R).

: 主にアストロサイトを含むという表現も。L1 contains mostly astrocytes, ... (2I).

> GABAergic neuron の割合が高い。

: Adult rat の layer 1 では,GAD+ neuronの割合が70%以上と高い。深層では 20%以下ぐらい(2)。

> 水平方向に走る神経繊維が多い。

> 他のlayerから軸索は入ってきているが,この層で途絶えているものも多い(6)。

他の層との関係

> 神経細胞がないが,他の層から軸索や樹状突起が入ってきている(3)。

> 多くは近くの層からであるが,layer 6から延びてきているものもある(3)。

> 視床からの線維が入る(5)。


Layer 2 (external granular layer, 外顆粒層)

> 小型の錐体細胞 pyramidal neuron と 星状細胞 astrocyte で構成される(4)。


Layer 3 (external pyramidal layer, 外錐体細胞層)

#4


Layer 4 (internal granular layer, 内顆粒層)

小さい神経細胞が密に詰まっているのが特徴で,そのために顆粒層と呼ばれる(3)。毛細血管の密度も高い(8)。

 

嗅覚以外の感覚信号は視床 thalamus を通るが,layer 4 は視床の神経核 nucleus と大脳皮質を繋ぐ役割を果たしている(7)。実際に神経核からの物理的な入力も受けている。

様々な部位の layer 4


> 多くの種で,motor and premotor area には存在しないことがわかっている(4)。

> ラット島皮質 insular cortex では,layer 4 が存在しないか未発達な領域が大部分を占める(7)。

他の層との関係


> 視床 thalamus - layer 4 - 3 - 5 - 6- thalamus と繋がる良く知られたネットワークがある(6)。

: ネコ,齧歯類,サルで基本的に保存されている。

> Layers 3 and 2にシグナルを伝えるが,一部のシグナルはこの辺りで止まり,3Bから他の領域へ流れる(3)。

 

> 上下のlayersから,樹状突起 dendrites が入ってきている。

: Layer 5 pyramidal neuronの spiny apical dendritesが入ってきている(3)。

: また,layer 3 pyramids spiny basal dendtitesもある(3)。


Layer 5 (internal pyramidal layer, 内錐体細胞層)

> Layer 2/3からのインプットが多い(3)。なおlayer 2/3から6へのインプットは少なく,主に同じカラムのみ。

> "mortor" output layer: 行動を決めるシグナルのほぼ全てがこの層から発している(3)。

 


Layer 6 (multiform layer, 多型細胞層)

> Layer 5と同様に視床に繋がっているが,layer 5のように行動に繋がるシグナルを伝えるわけではない(3)。


Others

> Laminaは哺乳類特有のものではなく,たとえば爬虫類の脳にも存在する(4)。


References

  1. Beaulieu 1993a. Numerical data on neocortical neurons in adult rat, with special reference to the GABA population. Brain Res, 609, 284-292.
  2. Takata 2008a. PLoS One, 3, e2525.
  3. Shipp 2007a (Review). Structure and function of the cerebral cortex. Curr Biol 17, R443-R449.
  4. Defelipe 2011a (Review). The evolution of the brain, the human nature of cortical circuits, and intellectual creativity. Front Neuroanat 5, 29.
  5. 河合良訓 監修 2005a. 脳単. 株式会社エヌ・ティー・エス.
  6. Douglas and Martin 2004a (Review). Neuronal circuits of the neocortex. Annu Rev Neurosci 27, 419-451. 
  7. Kobayashi 2011a (Review). Macroscopic connection of rat insular cortex: anatomical bases underlying its physiological functions. Int Rev Neurobiol 97, 285-303.
  8. 山本 2007a (Review). デオキシヘモグロビンとfMRI信号の多様な関係. J Jpn Coll Angiol 47, 5-10.