1-4-2015 updated
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言葉の定義は以下のとおり。
学習や記憶は,脳 brain の単一の構造や機能によって説明されるわけではなく,複数のシステムが絡み合って行われる作業である。
> 動物では,学習や記憶は直接テストすることができず,行動試験の結果から予測できるだけである(2)。
記憶の分類を階層的にまとめる(1)。よく知られているのは,記憶の種類による陳述・非陳述記憶という分類と,時間による長期・短期記憶という分類である。
記憶 memory
陳述記憶 declarative(顕在記憶 explicit): 事実や出来事の記憶。 e.g. 今朝はご飯を食べた
非陳述記憶 nondeclarative(潜在記憶 implicit)
手続き記憶: 技術や習慣の記憶。 e.g. ピアノを弾く
プライミング:
古典的条件付け:
非連合学習:
記憶 memory
長期記憶 long-term memory: 長い間維持される記憶。 e.g. 子供のころの思い出
短期記憶 short-term memory: 短い間維持される記憶。 e.g. 今朝やったこと
作業記憶 working memory: 何かの作業を行うために,ごく一時的に貯えられる記憶。
感覚記憶: 各感覚器官に存在し,瞬間的に保持されるのみで意識されない記憶(5)。
陳述記憶 declarative memory は,意識的な想起 conscious recollection が可能である(1)。つまり,「昨日は・・・をして,それから・・・をして・・・」という形で意識的に思い出すことができる。このことから,顕在記憶 explicit memory とも呼ばれる。以下の非陳述記憶と対応させた場合,陳述記憶の特徴は
一方,非陳述記憶 nondeclarative memory は,たとえばピアノを弾いたり自転車に乗ったりする技術の記憶であり,これらは意識的に想起されるものではない。そのため,しばしば潜在記憶 implicit memory とも呼ばれる。
このほか,参照記憶 reference memory という概念もある。 Morris water maze で,試行間で一定のゴールの位置は試行間で有効な参照記憶となり,毎回異なる位置からネズミを泳がせると泳ぎ初めとゴールの位置関係は試行内だけで有効な作業記憶となるらしい(6)。
ヒトは,特定の状況下において必要な記憶を選択的に呼び出すことができる(3)。これを想起 retrieval といい,この間,関係のない記憶の想起は inhibit されていると言える。
> 思い出したくない記憶の想起を選択的に阻害する仕組みも備わっている(3)。以下の 3 つのメカニズムが提唱。
1. PFC から特定の記憶の想起を阻害するシグナルが出ている。Direct inhibition.
2. PFC からのシグナルで,海馬で一連の記憶の再活性化が起こるが,ここが阻害。Reactivation inhibition.
3. 様々な記憶が,競合阻害のような形で特定の記憶の想起を阻害。Competitive attentional inhibition.
記憶の物質的な根拠は,エングラム engram または記憶痕跡 memory trace と呼ばれる。
Hebb は,20 世紀半ばに「記憶は特定の細胞の中ではなく,細胞同士の結合の中に広く分配されて保存される」とする仮説を提唱した(1)。この概念は原則として今でも生きており(4),分散記憶モデル distributed memory model として発展している。この記憶方法の利点は,関係するニューロン neuron が死滅したときにも記憶が維持されることである。
> ラシュレイ Lashley のラット迷路学習実験(1)
: 学習前にラットの皮質を損傷させると,迷路の学習が阻害される。Food reward を条件付けに使っている。
: 迷路を学習した後に皮質を損傷させると,その程度に応じて記憶に障害が現れる。
: しかし,記憶の障害は皮質の損傷部位とは関係がなかった。→ 記憶は皮質に均等に分配されていると結論した。
: 現在では,この結論は誤りであるとされており,原因として損傷の程度が大きすぎたことなどが挙げられている。
: しかし,少なくとも記憶は脳の複数の部位に分配されており,その意味では結論は正しかったと言える。