眼窩前頭皮質 Orbitofrontal cortex (OFC), 霊長類

9-13-2015 updated

  1. 概要: OFC とは
  2. OFC の機能(霊長類)
  3. OFC の関わるネットワーク
  4. OFC と病気
  5. Food cue による活性化

関連する脳領域


関連項目




概要: OFC とは(ヒト)

眼窩前頭皮質(がんかぜんとうひしつ)と読む。 Prefrontal cortex の部分構造の一つである(5)が,多くの重要な機能をもっているために独立して扱われることが多い。


PFC のうち magnocellular medial nucleus of the dorsomedial thalamus から直接投射を受ける部位 として定義されている(6D)。 なお,PFC は dorsomedial thalamus から投射を受ける領域であるため,この点で PFC と OFC は明瞭に区別される(8)。



感情や executive processing を司る以下の部位と直接繋がっている。


食事などの 報酬 reward と快楽 hedonic experience を結びつける部位とされており,そのために以下のような行動との関連が指摘されている(8)。


  • Sensory integration
  • Representation of the affective value of reinforces
  • Decision making
  • Expectation

ヒト OFC の場所(4)。 Ventral surface of the frontal part of brain (8) と表現される。


Broadmann area では 10, 11, 47 に相当するが,これらは厳密に OFC と対応しておらず,また他の種にも適用することができないため,あまり有用ではない(8)。


OFCの部分構造

The medial area of OFC appears to be involved in evaluating the reward value of reinforcers, while the lateral areas of the OFC are involved in evaluating the punishment value of reinforcers (6D).


OFC の機能,霊長類

ヒトでは,OFC の障害が

 

  • Altered socio-emotional behavior(3)
  • Hyperkinesis(3)
  • Deficits in the processing of olfactory and gustatory information(3)
  • Spontaneity(3)
  • Apathy(6D)


などを引き起こす。これらは統合失調症の negative symptom とよく似ていることから,統合失調症における OFC の機能低下が示唆されている。


他の霊長類でもほとんど同じで,

 

  • Disinhibition of motor behaviors
  • Deficits in certain types of olfactory and gustatory processing
  • Deficits in association between reward and external cues

 

などが起こる(3)。ただし,嗅覚や味覚の discriminations の機能が低下するわけではなく,これらの情報処理に関連した working memory が影響を受ける。


OFC の関わるネットワーク

五感を司る領域の全てから input があるほか,少なくとも以下の領域からの投射を受けている(8)。


> Sensory input には,五感からの情報を統合し,それらを reward として評価するという意義があると考えられている(8)。

OFC へ投射がある領域 投射の機能
扁桃体 Amygdala

Cingulate cortex
Decision making, performance and outcome monitoring に重要とされている(8)。
Insula/operculum  
視床 Hypothalamus  
海馬 Hippocampus  
線条体 Striatum  
Periaqueductal grey  
Dorsolateral prefrontal cortex  

OFC と病気

OFC の異常と関係のある病気として,以下のようなものが知られている。

  • 統合失調症 schizophrenia
  • 気分障害 mood disorders (双極性気分障害 bipolar mood disorder,躁状態と鬱状態を繰り返す)
  • Anxiety disorders
  • Personality disorders
  • 薬物依存 drug addiction

統合失調症 schizophrenia

> OFC のサイズに関しては,肥大/萎縮の両方の報告がある(5)。

> Social decision-making 時に,OFC, amygdala, insula の BOLD シグナルの変化が患者と健常者で異なる(5)。

> Left OFC, medial frontal gyrus の BOLD activation が,患者 > 健常者(5)。



うつ病 major depression

> OFC 体積の減少が報告されているが,差が無いとする報告もある(5)。

> Increased Glc metabolism and CBF in medial/lateral OFC in depressed phase vs. remitted phase (5).

> Reduced 5-HT 1A receptor binding in OFC (5).



双極性障害 bipolar disorder

> OFC volume は減少,しかし差がないという報告も(5)。

> Manic(躁)状態で reduced activation (5)。 うつ状態でも activation 低下(5)。



PTSD (posttraumatic stress disorder)

> Reduced OFC volume in survivors of cancer with PTSD, compared with those without PTSD (5).

: Healthy control と比べても,OFC 容積は減少していた。

: Amygdala による過剰な fear を OFC が止めることができない状態,と考えられるかもしれない。


> Childhood sexual abuse の経験のある女性,PTSD ありのグループとなしのグループによる比較(5)。

: 嫌な経験を思い出している間に OFC rCBF が増大,その程度が PTSD ありのグループで大きい。


> ベトナム戦争での PTSD 患者(5)。

: トラウマ経験中に,PTSD group で OFC rCBF が低い。

: この減少は,left amygdala, right periamygdaloid cortex での rCBP と逆相関していた。


Panic disorder

> Unexpected panic attack で,OFC rCBF が低下した(5)。



強迫神経症 obsessive compulsive disorder, OCD


OCD は強迫性障害とも呼ばれる精神疾患の一つで,不合理な考えを望まずに繰り返してしまう 強迫観念 obsession と,それを打ち消すための 強迫行為 compulsions を特徴とする。 手が汚れていると思い込んで,何時間も手を洗ってしまうなど。


> Thalamic regions の異状による OFC hyperactivity が報告されている(5)。

: ただし,OFC hyperactivity を認めない報告も多数あり,見解は一致していない(7)。

 

> fMRI で OFC の過剰な activation が報告されている(5)。



人格障害 personality disorder

人格障害は,DSM-IV で以下の 3 段階に分類されている(5)。


A. Excentric (paranoid, schizoid, schizotypical)

B. with marked impulsivity and difficulty to accept social rules (antisocial, borderline, narcisistic, hystrionic)

C. ancious and risk-avoidant.


> とくに,クラスター B において OFC volume reduction が報告されている(5)。



薬物依存 drug addiction

> アルコール,コカイン,crack, マリファナ使用者で OFC 活性の低下が報告されている(5)。

: Reduced activity was associated with decreased availability of D2R in striatum.



Food cue による活性化

食べ物の写真は,実際にそれを食べた状態を想像させる food cue として研究に使用される。OFC は food cue によって活性化される部位の一つとして有名であり,食べ物の報酬 reward に関係しているとされる。

 

一般に,肥満したヒトや動物の方が,様々な面で food cue に対する反応が高いことが示されている。

> ヒトおよびモデル動物で,OFC と amygdala が活性化されることが知られている(1D)。

> ラットで amygdala を刺激すると,過食症を呈する(1D)。

> ラットでは,聴覚刺激で活動電位が発生する領域らしい(2)。


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References

  1. Stoeckel et al. 2008a. Widespread reward-system activation in obese women in response to pictures of high-calorie foods. NeuroImage 41, 636-647.
  2. Ewing et al. 2013a. Evidence for impaired sound intensity processing during prepulse inhibition of the startle response in a rodent developmental disruption model of schizophrenia. J Psychiatr Res 47, 1630-1635.
  3. Uylings et al. 2003a (Review). Do rats have a prefrontal cortex? Behav Brain Res 146, 3-17.
  4. "Orbital gyrus viewed from bottom" by Polygon data were generated by Database Center for Life Science(DBCLS)[2]. - Polygon data are from BodyParts3D[1]. Licensed under CC BY-SA 2.1 jp via ウィキメディア・コモンズ.
  5. Jackowski et al. 2012a (Review). The involvement of the orbitofrontal cortex in psychiatric disorders: an update of neuroimaging findings. Rev Bras Psiquiatr 34, 207-212.
  6. Venkatasubramanian et al. 2008a. Automated MRI parcellation study of regional volume change and thickness of prefrontal cortex (PFC) in antipsychotic-naive schizophrenia. Acta Phychiatr Scand 117, 420-431.
  7. Menzies et al. 2008a (Review). Integrating evidence from neuroimaging and neuropsychological studies of obsessive-compulsive disorder: the orbitofronto-striatal model revisited. Neurosci Biobehav Rev 32, 525-549.
  8. Kringelbach 2005a (Review). The human orbitofrontal cortex: linking reward to hedonic experience. Nat Rev Neurosci 6, 691-702.