12-07-2013 updated
脳のトランスクリプトーム解析は数多く行われていますが,それぞれの情報量が多いため,このページでは文献ごとに内容を整理します。
Researcher
> N=57,うち39検体は両方の半球を含む。受胎後 5.7 週- 82 歳まで。男性31名,女性26名。
> 死後 12.11 ± 8.63 時間。pH 6.45 ± 0.34。
> Neocortex, hippocampus, amygdala, striatum, cerebellar cortex など16の領域を調べている。
> Affymetrix GeneChip Human Exon 1.0 ST; 140万の転写産物が乗ったマイクロアレイ。
> 全長の転写産物だけでなく,それぞれの exon について発現パターンを調べることができる。
> 調べた17,565個の遺伝子のうち,15,132個がいずれかの時期に発現していた。
> その約90%は,年齢もしくは部位で異なる発現パターンを示す DEX (differently expressed) gene であった。
> 発現パターンに影響が大きいのは年齢,次に脳の部位であり,性,民族,個人差の影響は比較的小さかった。
> 発現している15,132個の遺伝子の90%は,選択的スプライシングのため differential exon usage を示した。
> 性差による分析も行っている。性染色体の遺伝子のほか,IGF2の発現が女性胎児で低いのが興味深い。
> 発現パターンの似た遺伝子のグループを作る co-expression network analysis。
> マイクロアレイの結果を検証するという意味も込めて,機能既知の遺伝子の発現パターンをいくつか示している。
: たとえば,シナプス形成に関連する遺伝子群の発現量と,シナプス密度が相関している。
> SNPと発現量の関係を調べる cis-eQTL 解析。
: よく知られている通り,発現量に影響するSNPは転写開始点または終結点の近傍に存在する。
> 著者らは以下の点を課題として挙げている。
: 偽陽性を減らすために厳しい基準を用いたため,実際には起きている変化を見逃している可能性がある。
: 試料には多くの種類の細胞が含まれている。細胞レベルの遺伝子発現まで議論することができない。
: mRNA量とタンパク質量が相関しないという問題。
> N=2 (部分的に3),24歳と39歳の男性。結果は Allen Brain Atlas で公開されている。
> MRI で高解像度の画像を撮ったあとに凍結し,約900の領域でtranscriptomeと組織学的解析。
> Agilent custom 64K microarray を使用。
> ドーパミン dopamin 系の遺伝子発現部位を調べ,マイクロアレイの結果を評価。
: ドーパミン合成の律速酵素 Tyr hydroxylase は,substantia nigra や VTA などで高発現している。
: これらは,ドーパミン作動性または,ドーパミンからノルエピネフリンを合成するニューロンである。
> 大脳新皮質 neocortex と,小脳 cerebellum の発現パターンは,他の領域に比較して均一であった。
: しかし,その中で sensorimotor cortex は特異な発現パターンを示した。
> 全体の傾向として,遺伝子発現は細胞の種類を反映していた。ニューロン,アストロサイトなど。
> Cortex では,互いに近い領域ほど遺伝子発現パターンが似ている傾向にあった。
> 発現パターンが多様な遺伝子 high variation gene は,脳のいろいろな部位で発現している傾向。