神経細胞 Neuron

8-5-2017 Last update

 

このページは ニューロン @本家UBサイト に恒久的に移転しました。このページもネット上に残っていますが,最新の情報はリンク先を参照して下さい。

 

  1. 概要: ニューロンとは
  2. ニューロンの分類
  3. 神経系 Nervous system
  4. 電極による神経活動の記録

 

ニューロンに関係する構造

  1. シナプス: Synapse
  2. ミエリン鞘: Myelin sheath
  3. 介在ニューロン: Interneuron

 

電気生理関連

  1. 膜電位: Membrane potential
  2. 活動電位: Action potential
  3. 跳躍伝導: Saltatory conduction
  4. Local field potential (LFP)
  5. 発火頻度(発火率,Firing rate

神経系

  1. 自律神経系 Autonomic nervous system
  2. 嗅神経
  3. 視神経
  4. 動眼神経
  5. 滑車神経
  6. 三叉神経
  7. 外転神経
  8. 顔面神経
  9. 内耳神経
  10. 舌咽神経
  11. 迷走神経
  12. 副神経
  13. 舌下神経


ニューロンとは

神経細胞 neuron or nerve cell は,情報処理と情報伝達に特化した多細胞動物に特有の細胞である。下の図(4)のように,

  1. 核のある細胞体 cell body (or soma)
  2. 長い軸索 axon
  3. 樹状突起 dendrite

 

から構成される。

 

樹状突起は他のニューロンから情報を受け取る役割(入力)を,軸索は他の細胞に情報を伝える役割(出力)を果たす。軸索の末端と樹状突起の間には,シナプス synapse と呼ばれる隙間がある。

 

円口類以外の脊椎動物では,軸索は髄鞘(ミエリン鞘 myelin sheathと呼ばれる絶縁体で覆われている。髄鞘には一定の間隔でランビエ絞輪 node of Ranvier と呼ばれる隙間がある。電気信号はここを跳躍伝導 saltatory conduction によって伝わっていく。

 

 



ニューロンの分類

機能による分類

機能に応じて,以下の3種類に分類される。

 

  1. 感覚器(目,鼻など)からの刺激を中枢(脳,脊髄など)に伝える 感覚ニューロン sensory neuron
  2. 中枢においてニューロン同士を繋げている 介在ニューロン intermediate neuron
  3. 中枢からの命令を末梢(筋肉など)に伝える 運動ニューロン motor neuron

> 介在ニューロンには多くの種類が存在し,マーカー分子の発現と投射様式で分類されている。

: パルブアルブミン parvalbumin (PV) を発現する PV neuron が約25%を占める(1)。

 

髄鞘の有無による分類

髄鞘に覆われたものを有髄神経,覆われていないものを無髄神経という。

 

> 有随神経では,跳躍伝導 saltatory conduction によって信号が伝わる。これは無随神経の伝達より速い。

> 体内の状況をモニターする神経の多くは無随神経である(2)。

: たとえば,迷走神経 vagus nerve の80%はミエリン鞘がなく,残りの20%も少ない。

 

形態による分類

最も一般的なニューロンの形態は,右図(Wiki 錐体細胞)に示すような錐体細胞 pyramidal neuron である。

 

大脳皮質 cortex および海馬 hippocampus の主要な神経細胞であり,上記の模式図に示されたような軸索や樹状突起をもつ。



放出する神経伝達物質による分類

ニューロンはシナプス synapse から神経伝達物質を放出する。その種類によって分類することもできる。

 

  • グルタミン作動性ニューロン Glutamatergic neuron
  • GABA作動性ニューロン GABAergic neuron
  • ドーパミン作動性ニューロン Dopamatergic neuron

などが有名である。

 

この「作動性」という言葉はよく混乱のもととなるが,「放出」の意味である。つまり Glutamatergic neuron はグルタミン酸を放出するニューロンである。

 

なお,一般に Glutamatergic neuron は興奮性,GABAergic neuron は抑制性であるとされる。これは,神経伝達物質を受け取ったニューロンの膜電位 membrane potential が脱分極の方向へ向かうか,過分極の方向へ向かうかを表している。(単純に言うと,興奮性の神経伝達は活動電位 action potential を発生させる方向に働く)

 

神経伝達物質の種類によっては,興奮および抑制が受容体によって決定される場合がある。たとえばドーパミンには複数の受容体があり,D1 受容体は興奮性の刺激を,D2 受容体 は抑制性の刺激を伝える。

 

 


神経系 Nervous system

神経系 nervous system は,

 

The system of cells and tissues in multicellular animals by which information is conveyed between sensory cells and organs and effectors (such as muscles and glands)

 

と定義されている(5)。

 

  • 中枢神経系 central nervous system: 脊椎動物では脳 brain,脊髄 spinal cord から成る。無脊椎動物では nerve cord および ganglion から成る。
  • 抹消神経系 peripheral nervous system: 中枢神経以外の神経と定義される。体の各所に存在する神経系。

電極による神経活動の記録

ニューロンの活動を電極で記録する場合,細胞内記録細胞外記録の2つの方法がある(3)。

 

細胞内記録は,細いガラス電極を細胞に差し込んで細胞内電位を測るもので,以下のような特徴がある(3)。

  • 主に in vitro。脳 brain のスライスに対して顕微鏡下で実験を行う。
  • ニューロンの活動電位だけでなく,閾値以下のシナプス入力や膜電位の変化を観察できる。
  • ニューロンの自然に近い振る舞いを記録しようとする current clamp, イオンチャネルやシナプスといったニューロンの構成要素の特性を調べる voltage clamp の2通りがある。

 

細胞外記録は,脳組織に金属の電極を差し込む。特徴は

  • 主に in vivo。
  • 細い電極を細胞体の近くにもっていくと,単一のニューロンの活動電位を記録できる。これを single unit 記録という。
  • 太い電極を使うと,近傍の多数のニューロンの活動を平均して記録できる。これは local field potential と呼ばれる。

 

細胞外記録では,電極とニューロンの位置関係により LFP の振幅や波形が変化する。LFP からスパイク応答を検出する方法は spike sorting と呼ばれ,数理上の興味深い問題である(3)。


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References

  1. 橋本ほか 2010a (Review). 統合失調症と大脳皮質GABA神経伝達異常. 精神神経学雑誌 112, 439-452.
  2. Damasio and Carvalho 2013aR (Review). The nature of feelings: evolutionary and neurobiological origins. Nat Rev Neurosci 14, 143-152.
  3. 銅谷 2005a (Review). ニューロンのデータ解析. 数理科学 507, 1-8.
  4. By LadyofHats - Own work. Image renamed from Image:Complete neuron cell diagram.svg, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3970826
  5. A Dictionary of Biology (Oxford Paperback Reference).