6-17-2014 updated
神経細胞 neuron では,外界からの刺激などに応じてNa+イオンが細胞内に一過的に流入し,活動電位 action potential が発生する。これを発火 firing という。概要を箇条書きで示す。
参考: 活動電位が発生するメカニズム
眼 eye などの感覚器から受け取った情報は,脳 brain に伝えられて処理されることになるが,脳での情報処理の実態は,膨大な数のニューロンの発火パターンである。この点において,脳での情報処理はデジタルであると言える。
活動電位 action potential が発生する際に,どれだけ電位が上昇するかは,電位依存性Na+チャネルの特性による。上の説明でみるように,一般には電位は -70 mV から 30 mV 程度まで変化するが,その変化の度合いは長い軸索の部位によって異なっている(1)。つまり,電位の上昇分には情報としての価値はなく,発火するかしないかというパターンが重要になる。繰り返しになるが,デジタルな情報処理である。
このことから,発火頻度 firing rate が情報として高い価値をもっていることがわかる。 頻度が高いほど,ある情報を確実に他の細胞に伝えているものと考えられる。
> 発火頻度の分布は,ランダムでポワソン過程で近似できるものから,規則性の高いものまで様々(1)。
: 多くの場合,情報は平均発火頻度の時間的な変化によって運ばれていると考えられている。
: それに加えて,発火のタイミングも情報伝達において重要であるとする説もある。
> 個々のニューロンは,自分の担当する刺激に対して,他のニューロンとは独立に確率的に発火する(2)。
: Cell assembry 仮説: 同時に発火しているニューロンの組み合わせが,特定の事象を表現する。
: 組み合わせのパターンを使うことで,少ない数のニューロンで多くの事象を表せるようになる。
上記のように,神経では発火のタイミングのみが重要であるので,横軸に時間をとり,発火のタイミングを記録する図が神経活動の記録として用いられる。これはラスタープロット raster plot と呼ばれる。
右の図は,文献2を参考に MATLAB で作成した raster plot である。300 - 600 ms で発火の頻度が上昇しており,300 ms あたりで何かの刺激があったことを示唆するデータである。