Proteins and genes

02/06/2016

 

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糖代謝 Carbohydrate metabolism

Hexokinase ヘキソキナーゼ

解糖系の 1 番目の反応であるグルコースのリン酸化を触媒する酵素。グルコース-6-リン酸が生成する。

 

Phosphofructokinase (PFK) ホスホフルクトキナーゼ

解糖系の 3 番目の反応である,フルクトース-1-リン酸からフルクトース-1,6-ビスリン酸への反応を触媒する酵素。ここは解糖系でも少ない不可逆反応で,解糖の重要なコントロールポイントの一つである。

Glyceraldehyde 3-phosphade dehydrogenase (GAPDH, G3PDH)

EC1.2.1.12. 解糖系の 6 番目の反応を触媒する酵素で,しばしば遺伝子発現を観察する際の内部標準としても使われる。

Pyruvate kinase (PK) ピルビン酸キナーゼ

解糖の最後(10番目)の反応を触媒する酵素。ホスホエノールピルビン酸から ADP にリン酸基を転移させることで,ATP とピルビン酸を作る。

 

Pyruvate dehydrogenase complex (PDH) ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体

解糖の最終産物であるピルビン酸 pyruvate からアセチルCoAを合成する酵素複合体。アセチルCoAはその後 TCA回路 で酸化されるほか,脂肪酸合成などにも使われる。この反応は好気的条件下で起こり,嫌気的条件下では,ピルビン酸は乳酸デヒドロゲナーゼ LDH によって乳酸 lactate になる。なお,ピルビン酸は,ピルビン酸カルボキシラーゼによってオキサロ酢酸としてもTCA回路に入る。

 

Pyruvate carboxylase (PC) ピルビン酸カルボキシラーゼ

解糖の最終産物であるピルビン酸から,オキサロ酢酸を合成する酵素。この反応はピルビン酸がTCA回路に入る第2の経路であり,補充反応 anaplerosis と呼ばれる。肝臓および腎臓では,オキサロ酢酸は糖新生に使われる。

 

Lactate dehydrogenase (LDH), 乳酸デヒドロゲナーゼ

ピルビン酸 pyruvate と乳酸 lactate の転換を触媒する酵素で,哺乳類では2種の35 kDaサブユニット4分子から成る。

 

Phosphoenolpyruvate carboxykinase (PEPCK),ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ

EC4.1.1.32. 細胞質でオキサロ酢酸をホスホエノールピルビン酸 PEP に変換する酵素。この反応は糖新生の律速段階であり,PEPCK の転写はインスリン insulin によって阻害される。

Lactate racemase, 乳酸ラセマーゼ

L- および D-乳酸の変換を触媒する酵素。原核生物のみで発見されている。最近分子が同定され, ニッケルに依存した活性化機構があることが明らかになった。

 

Glucose-6-phosphate dehydrogenase (G6PD) グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ

解糖系の中間代謝産物であるグルコース-6-リン酸を脱水素する酵素。その水素はNADP+をNADPHに還元するために使われる。解糖からペントースリン酸経路への入口の反応である。ペントースリン酸回路では2分子のNADPHが生み出されるが,その1個目を生み出す反応とも言える。 

 

6-phosphogluconate dehydrogenase (6PGD) ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ

6-ホスコグルコン酸を脱水素する酵素で,ペントースリン酸回路で2番目にNADPHを生み出す反応を触媒する。

 

 

Succinate dehydrogenase, コハク酸デヒドロゲナーゼ

ミトコンドリアに存在する酵素複合体で,TCA 回路の8番目の反応(コハク酸 -> フマル酸)を触媒する酵素である。膜を抽出する実験で,この酵素の活性が純度の確認に使われることもある(Sawada, 1990a)。

 

 

Alcohol dehydrogenase, ADH, アルコールデヒドロゲナーゼ,アルコール脱水素酵素

EC.1.1.1.1., EC.1.1.1.2, EC.1.1.1.71 の3つの酵素がある。アルコールを酸化してアルデヒドにする反応を触媒する酵素。ヒトでは少なくとも6つの isoform が存在する。

 

AMP-activated protein kinase (AMPK; 哺乳類C. elegans) AMP活性化プロテインキナーゼ

細胞のエネルギーセンサーとして重要なセリン/スレオニンキナーゼ。シグナル伝達による制御のほか,AMT/ATP比が上がる(エネルギーとしてのATPが消費される)ことでも活性化する。生理機能は多岐にわたるが,基本的には糖や脂質を酸化し,ATPを生み出す方向に作用する。

 

NADH-dependent cytochrome c reductase

Cytochrome c reductase にはたくさん種類があるようで難しいが,この分子は小胞体 endoplasmic reticulum に局在しており,このオルガネラの selective marker として使われる(Zubeno, 1989)。

 

Hydroxy-carboxylic acid (HCA) receptors, HCA受容体

脂肪細胞で主に発現し,エネルギーの代謝を制御する GPCR。

  • HCA1 (GPR81): 乳酸 lactate の受容体で,脂肪細胞では乳酸による cAMP の低下を仲介する。 脳 brain でも発現しており,低血糖時などにおける脳機能の維持に関与していると考えられている。
  • HCA2 (GPR109A): 3-ヒドロキシ酪酸によって活性化される。
  • HCA3 (GPR109B): β 酸化の中間体,とくに 3-hydroxy-octanoic acid によって活性化される。

 

 


脂質代謝 Lipid metabolism

脂肪酸合成


Acetyl-CoA carboxylase (ACC) アセチルCoAカルボキシラーゼ

アセチルCoAをカルボキシル化し,マロニルCoAを作る酵素。脂肪酸合成の律速酵素である。

 

Sterol regulatory element-binding protein (SREBP) 

脂肪酸やコレステロール合成を制御する転写因子。小胞体の膜タンパク質として発現し,プロテアーゼによって切断されて活性化する。

 

 

脂肪分解 Lipolysis


 

Adipose triglyceride lipase (ATGL)

脂肪分解 lipolysis の第一段階,トリアシルグリセロールからジアシルグリセロールおよび脂肪酸を作る反応を触媒する酵素。

 

Carboxyl ester lipase (CEL), bile-salt activated lipase

非特異的な脂質分解酵素で,コレステリルエステル,アシルグリセロール,リン脂質を全て加水分解することができる。原則として膵臓と乳腺で作られるが,筋肉でも発現している。

Hormone-sensitive lipase (HSL) ホルモン感受性リパーゼ

脂肪分解 lipolysis に関わる酵素。脂肪の主成分であるトリアシルグリセロール(TAG)の分解を触媒する。かつては TAG 分解の律速酵素と考えられていたが,ジアシルグリセロールに対する分解活性の方が高く,TAG 分解は ATGL という酵素が主に行っていることがわかってきた。

 

Protein kinase A (PKA), プロテインキナーゼA, cAMP-dependent protein kinase

EC 2.7.11.11. cAMP によって活性化されるキナーゼである。

 

 

油滴形成 Lipid droplet formation


Fat-inducing transcript (FIT)

2008年に報告された油滴形成に関わるタンパク質。小胞体に局在する膜貫通タンパク質であり,油滴の主成分であるトリアシルグリセロール TAG と直接結合することで,油滴形成に寄与する。

 

Perilipin, ペリリピン

油滴 lipid droplet の表面などに局在し,油滴の形成や脂質の代謝を制御するタンパク質。油滴に含まれるタンパク質のなかでは最も量が多い。哺乳類では 1 - 5のアイソフォームが知られている。

 

アディポカインとその受容体 Adipokine and related molecules


Adiponectin アディポネクチン

脂肪細胞が分泌するホルモン。

 

Leptin レプチン

脂肪細胞が分泌する約16 kDaのペプチドホルモン。中枢神経系に作用し,食欲を抑制する作用があるほか,食欲とは独立して代謝調節を行う。

 

Leptin receptor レプチン受容体

レプチン leptin の受容体。肥満モデル Zucker rat で変異が入っている遺伝子でもあるが,この遺伝子の SNP とヒトの肥満との間には,はっきりした関係はないという考えが有力である。

Tumor necrosis factor alpha (TNFα)

哺乳類で,活性化されたマクロファージや脂肪細胞などによって産生される炎症系サイトカイン。細胞接着分子の発現,アポトーシス誘導,抗体産生の亢進などを行うことにより,抗腫瘍や感染防御を行う。
 
 

脂質輸送 Lipid transport


 

Apolipoproteins アポリポタンパク質

リポタンパク質 lipoprotein を構成する成分のうち,タンパク質であるものを総称してアポリポタンパク質という。A, B, C, E などのクラスに分かれており,さらに A-II などのサブクラスがある。

 

Apolipoprotein C2 (ApoC2)

リポタンパク質 lipoprotein の構成成分。細胞へのリポタンパク質の取り込みを行うリポタンパク質リパーゼ(LPL)に結合して活性化する機能がある。

 

Apolipoprotein E (ApoE)

リポタンパク質 lipoprotein の構成成分の一つ。 ApoE の変異は Alzheimer's disease のリスクファクターであり,の脂質代謝においても重要な役割を果たしている。

 

FAT/CD36

長鎖脂肪酸の取り込みに関わる膜タンパク質。他にもコラーゲン collagen, 酸化 VLDL, 酸化 LDL など多くの分子をリガンドとする。

 

Lipoprotein lipase (LPL) リポタンパク質リパーゼ 

EC 3.1.1.34. 血管内皮細胞の表面などに局在する酵素で,リポタンパク質 lipoprotein 中のトリアシルグリセロール TG を加水分解する。遊離した非エステル化脂肪酸 NEFA は,細胞内に取り込まれてβ 酸化または再エステル化される。


インスリン/IGFシグナル Insulin/IGF signaling

#insulin


Insulin, インスリン(Human

血糖値の調節などに関わる同化ホルモン。


Insulin-like growth factor I (IGF-I) [mammalian, Drosophila, C. elegans, other animals]

プロインスリンに似た構造のペプチドホルモンで,かつてはソマトメジン somatomedin とも呼ばれた。肝臓をはじめとした様々な組織で合成され,同化作用を示す。

 

Insulin-like peptide (ILP)

Drosophila や C. elegans では,インスリンに似た構造をもつペプチドが数多く存在し,ILP と呼ばれる。進化距離もインスリン,IGF-I から同じくらい離れているものが多い。

 

IGF-I receptor (IGFIR), [mammalian, C. elegans DAF-2]

α,βサブユニット2分子ずつから成るチロシンキナーゼ型の IGF-I の受容体。IGF-I が結合すると細胞内ドメインが自己リン酸化し,ここに様々な分子が結合してシグナルを伝える。脊椎動物ではインスリン受容体と別の分子であるが,C. elegans では受容体は一つで DAF-2 と呼ばれる。

Akt/protein kinase B (PKB) [哺乳類Akt酵母Sch9]

セリン/スレオニンキナーゼで,インスリン様シグナルのほか TOR による制御も受ける。

 

Forkhead box transcription factor [FoxO; mammalian FoxOC. elegans DAF-16]

インスリン様シグナルが弱いときに活性化する転写因子。細胞分裂,アポトーシス,代謝,抗酸化などに関係する多くの遺伝子の転写を制御する。

Glucose transporter [GLUT2, GLUT4]

細胞内へのグルコースの取り込みを行うトランスポーター。 

GLUT1:

GLUT2: インスリンを分泌する膵臓β細胞の糖取り込みを担う。

GLUT3:

GLUT4: インスリン応答性のGLUT。細胞内のプールがインスリン刺激によって膜へ移行し,活性化されてグルコースを取り込むようになる。

Erk (Extracellular signal-regulated kinase) [mammalian]

細胞外シグナル調節キナーゼ Erk は,細胞分裂などを調節する MAPK として最初に同定されたキナーゼである。

 

TCER-1

おそらく transcription elongation factor で,C. elegans の寿命制御に重要。Germline ablationによる寿命の延長に必要であるが,野生型の寿命には影響しない。"Required for DAF-16-dependent uplagulation of some, but not all genes in germline ablated or IIS inhibited worms."


成長ホルモンシグナル Growth hormone signaling

#GH


Ghrelin グレリン

胃から分泌されるホルモン。 成長ホルモンの分泌を促進するほか,に作用してドーパミン神経を活性化させる作用もある。

 

Growth hormone, GH (Mammal)

成長,代謝を制御する下垂体ホルモン。成長促進作用は IGF-I(human, mouse)の分泌促進にもよるが,それとは独立した作用ももっている。脊椎動物からのみ発見されている。


免疫 Immune system


TLR, Toll-like receptors

炎症を引き起こす最初のシグナルを仲介する受容体。とくに,マクロファージでの TLR の活性化は嫌気代謝の活性化,乳酸の生成,TCA 回路の不活性化を引き起こす。


TORシグナル TOR signaling


Target of rapamycin (TOR)

栄養状態のセンシングと代謝調節に重要な役割を果たすキナーゼ。寿命 lifespan とも関係が深い(TORシグナルと寿命)。TORシグナルは,現在カロリー制限に最も近い分子機構と考えられている。

 

FoxA/pha-4

C. elegansでは,eat-2 遺伝子の変異による寿命延長に必要である(Greer, 2009a)。TOR の下流にある。

 

S6 Kinase

TORの下流にあるキナーゼで,そのリン酸化量がTORシグナルの強さの指標とされる。

 


神経 Neuron

#Neuron


グルタミン,グルタミン酸代謝 Glu/Gln metabolism


Glutamine synthetase (GS) グルタミン合成酵素

EC6.3.1.2. グルタミン酸にアンモニウムイオンを付加してグルタミンを合成する酵素。反応にはATPを必要とする。アンモニアの解毒に重要である。GSI, GSII, GSIII の3タイプに分類される。

 

GABA代謝 GABA metabolism


Glutamate decarboxylase (GAD) グルタミン酸カルボキシラーゼ

EC4.1.1.15. グルタミン酸から GABA (γ-アミノ酪酸)を合成する酵素。GAD65, GAD67 の2つのアイソフォームがある。GABAergin neuron では両方が発現しており,役割分担している。また,味蕾など非神経組織でも発現する。

 

GABA transaminase (GABA-T) GABAトランスアミナーゼ

EC2.6.1.19. GABA (γ-アミノ酪酸)分解の第一反応として,GABAをコハク酸セミアルデヒド(SSA, succinic semialdehyde)に分解する反応を触媒する酵素。ミトコンドリアに局在。 

 

Succinic semialdehyde dehydrogenase (SSADH) コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ

EC1.2.1.24. GABAの分解産物であるコハク酸セミアルデヒドをコハク酸 succinate にするNAD+依存的な酵素。コハク酸はTCA回路に入り,この反応でGABAの分解が完了する。

 

受容体 Receptor


Dopamine receptor ドーパミン受容体

神経伝達物質ドーパミン dopamine の受容体。ヒトでは D1 - D5 の5種類がある。D2R antagonist は,統合失調症 schizophrenia など精神疾患の治療薬としてよく使われる。


GABAreceptorGABAA受容体(イオンチャネル型)

神経伝達物質 GABA の受容体の一つ。

 

 

NMDA receptor NMDA型グルタミン酸受容体

 

Histamine receptor ヒスタミン受容体

4種のGタンパク質共役型受容体が発見されており,組織分布などが異なる。

H1型: 平滑筋,中枢神経などで発現し,炎症やアレルギー反応に関わる。

H2型: 消化管など。胃酸分泌反応に関わる。

H3型: 中枢神経系など。神経伝達物質としてのヒスタミンの働きを制御。

H4型: 胸腺,脾臓,小腸など。機能には未知の点が多い。


 

  • AMPA型グルタミン酸受容体
  • カイニン酸受容体
  • mGluR
  • GABAB受容体(GPCR)

チャネル Channel


VDCC, Voltage-dependent calcium channel, 電位依存性カルシウムチャネル 

カルシウムチャネルは,神経伝達に関わる VDCC と,小胞体などに存在するイオンチャネル内蔵型受容体に大別される。

 

VGSC, Voltage-gated sodium channel, 電位依存性ナトリウムチャネル

神経 neuron などの活動電位の発生に重要なチャネル。多くのアイソフォームがあり,VGSC blocker麻酔薬,鎮痛薬として重要である。

 

Kir2.1

カリウムチャネルで,これを強制発現することで神経の発火 firing を抑制することができる。In vivo でもこの手法が使われている(Mizuno, 2007a)。

 

その他 Others


Catechol-O-methultransferase (COMT) カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ

EC 2.1.1.6 カテコールアミン catecholamine の分解を行う酵素である。ドーパミン dopamine,ノルエピネフリン norepinephrine,エピネフリン epinephrine などの分解に関与する。

 

Endonuclease G エンドヌクレアーゼG

ほとんどの細胞のミトコンドリア内膜に存在する核酸分解酵素で,アポトーシスシグナルに応答して核へ移行する。核内の Mg2+ で活性化され,Ca2+ で活性化される DNase I とともに DNA を分解する。

 

Parvalbumin パルブアルブミン

様々な組織で発現するカルシウム結合タンパク質。神経系では,パルブアルブミンを発現する GABAergic interneuron が海馬 hippocampus などの脳波 EEG の発生に重要である。筋肉では弛緩の速度に関係する。

 

Proopiomelanocortin (POMC) プロオピオメラノコルチン

下垂体や視床で発現し,食欲を抑制する作用をもつ。プロテアーゼによってメラノコルチンペプチドが切り出される。メラノコルチンは脳にある受容体に作用するが,そのアンタゴニストとして AgRP(agouti-related protein)が知られており,こちらは食欲を増進する(ヒト,マウス,ゼブラフィッシュで示されている)。


筋肉 Muscle

#Muscle


Dystrophin ジストロフィン

デュシェンヌ型筋ジストロフィー Duchenne muscular dystrophy の原因遺伝子。細胞骨格アクチンを細胞外マトリクスと結びつける役割をしている。

 


酸化ストレス Oxidative stress

Glutathione-S-transferase [GST]

EC2.5.1.18. 自身のもつ Cys thiol をグルタチオンと反応させることで,活性酸素を除去する酵素。

 

Superoxide dismutase [SOD; Cu/Zn SODMn SOD, Extracellular SOD, Fe SOD] 

生体の様々な分子を酸化するスーパーオキシドO2-を,反応性の低い過酸化水素 H2O2 と酸素 Oに分解する反応を触媒する酵素。酸化ストレスを減らす機能がある。活性中心にある元素や局在で分類されている。 

 

Catalase カタラーゼ

過酸化水素H2O2を酸素と水に分解する反応を触媒する酵素。


ストレス応答,寿命

Frataxin (Fxn) フラタキシン

ミトコンドリアに局在する iron chaperone で,欠乏するとフリードライヒ運動失調症を引き起こす。


HIF-1α (hypoxia-inducible factor 1 alpha)

低酸素応答で重要な役割を果たす転写因子。

 

LEA protein (late embryogenesis abundant protein)

最初は植物の種から発見された。7つのファミリーから成り,種子や動物の休眠卵などでタンパク質の凝集を防ぐ機能をもっている。

Sirtuin [yeast Sir2, mammalian SIRT1]

カロリー制限 DR による寿命延長などの応答に必要とされる脱アセチル化酵素。

  

clk-1, demethoxyubiquinone hydroxylase

電子伝達系のユビキノン合成に必要な酵素。C. elegans で,この遺伝子の変異がインスリン経路とは独立に寿命を延長させることから注目を集めた。

 

 

ストレスタンパク質

Stress protein ストレスタンパク質

ストレスに応じて発現が増大する一連のタンパク質の総称。主要なものは,分子量によりHSP90,

HSP70, HSP60, small HSPs に分類される。

 

Heat shock protein 70 (HSP70)

最も研究されているストレスタンパク質。変性タンパク質や,新しく合成されるタンパク質の折りたたみを助ける。古細菌,原核生物,真核生物の全てに存在する。

 

Heat shock protein 90 (HSP90)

90 kDa ストレスタンパク質。調べられた全ての真核生物がもっており,分子シャペロンとしてストレス応答に関与する。また,特定のシグナル伝達分子の折りたたみを補助するため,形態形成など特定の生理作用との関わりが強い。


アルツハイマー病 Alzheimer's disease

Amyloid beta (including APP)(アミロイドβ) 

約40のアミノ酸から成るペプチドで,アルツハイマー病患者の脳に沈着する。 前駆体タンパク質Amyloid precursor protein(APP)からプロセシングにより作られる。

 

Apolipoprotein E (ApoE) アポリポタンパク質E 

脳では主に astrocyte とmicroglia から分泌され,中枢神経系での脂質輸送,シナプス形成,毒物の除去などに関わっている。ヒトでは ApoE2, ApoE3, ApoE4 の3つの allele が存在し,E4 allele がADのリスクファクターである。

 

Beta-secretase (BACE1, BACE2) β-セクレターゼ 

APP を切断する β-セクレターゼの遺伝子。BACE1とBASE2のアイソフォームがあり,異なる機能をもつ。

Insulin-degradating enzyme (IDE) 

NEP と同様に zinc metalloendopeptidase family に属し,AβやNEPの発現を誘導する転写因子AICDを分解する。またインスリンやIGFの分解にも関わるため,糖尿病との関係も示唆されている。

Neprilysin (NEP)

Aβ の分解に関わる酵素。Neutral zinc metalloendopeptidase family に属する膜タンパク質で,細胞外にある水溶性Aβを分解する機能がある。加齢とともに量が減り,またアルツハイマー病患者で発現や活性が下がっているという報告もある。

Presenilin (PS) 

家族性アルツハイマー病のうち約90%から,この遺伝子の変異が発見される。PS1とPS2がある。APP を切断する γ-セクレターゼ複合体を構成し,PSは活性部位にあたる。APPのほかにも多くの膜貫通タンパク質の切断を行う。

Tau

軸索 axon に局在する微小管結合タンパク質で,微小管の安定化に寄与している。アルツハイマー病では過剰にリン酸化された状態で凝集し,NFTsを形成する。


JNKシグナル


Jun-N-terminal kinase (JNK)

多細胞生物でよく保存されたキナーゼで,様々なストレスで活性化されるストレスセンサーである。


その他 Others


Na+/K+-ATPase, ナトリウムポンプ

EC 3.6.3.9。ATP 加水分解のエネルギーを利用して細胞内外のイオン濃度の勾配を作り出す膜タンパク質である。

 

MCT1, monocarboxylic acid transporter 1

1 価カルボン酸のトランスポーター。腸管での吸収と,血液脳関門 BBB での脳への物質輸送での機能がよく知られている。

 

Porin, ポリン

グラム陰性菌,ミトコンドリア,葉緑体外膜に存在する膜貫通タンパク質。小分子の受動的拡散を可能にするほどの大きな孔 pore を作る。たとえばミトコンドリアで作られたATPが細胞質へ移動するのも,この分子の働きによる。

Lectin, レクチン

糖鎖と結合するタンパク質の総称。ただし,抗体や酵素は含まれない。細菌やウイルスももっており,生物界に広く分布している。

Surf1

電子伝達系の最後の酵素である COX のアセンブルに関与する分子。ノックアウトマウスは寿命が長くなることが知られる。