カタラーゼ catalase とは,過酸化水素 H2O2 を分解する 以下の反応を触媒する酵素である。
2 H2O2 → 2 H2O + O2
この反応は,1 種類の分子から異なる 2 種の分子が生じる 不均化反応 である。
> ヒトのカタラーゼ遺伝子は,Wilms tumor という若年性腎臓ガンのマーカーとしてクローニングされた(4)。
: 11 番染色体上にあり,サザンブロットでバンドが 1 本であることから single copy gene と考えられる。
> ペルオキシソームで脂肪酸を酸化すると過酸化水素が発生する。カタラーゼはこれを除去する役目がある(5)。
: 詳細は ペルオキシソームでの脂肪酸酸化 のページへ。
マウスでは,カタラーゼを過剰発現させると寿命が長くなるという報告がある一方,効果なしとする報告もある。文献 1 は寿命延長を報告しているが,過剰発現しているのはミトコンドリアであり,本来のカタラーゼの局在とは異なる。おそらく,カタラーゼ過剰発現の効果は,オルガネラや臓器に非常に specific なものであると考えられる。
> ミトコンドリアで過剰発現すると,酸化ダメージが減って寿命が 21% 長くなった(1)。
> ペルオキシソームで過剰発現しても,わずかに寿命が長くなる(1)。
> ミトコンドリアで Mn SOD と catalase を発現させても,寿命は延びないとする報告(5)。
: Catalase は,活性と寿命にむしろ負の相関があった。
: Mn SOD の過剰発現(2 コピー)は寿命に影響しなかった。
> C. elegansでは,活性は一生の間に山形の変化を示し,3週間目に低下した(2)。30-80 unit/mg protein。
> 寿命の長い age-1 mutant では,老齢期の活性低下がみられない傾向にあった(2)。
> カタラーゼの過剰発現は,孵化異常をもたらした。過酸化水素が孵化に必要と思われる(6)。
: SOD-1 を過剰発現すると,この孵化異常は解消された。過酸化水素が供給されるようになったのか?
: だとすると,SOD とカタラーゼのバランスは非常に重要である。
: カタラーゼの過剰発現は,単独でも SOD と一緒の場合でも寿命に影響しなかった。
> 初代培養した astrocyte で,過酸化水素やパラコート処理で Mn SOD, catalase mRNA が増える(3)。
: Mn SOD は酸化ストレスでプロモーター活性も増大するので,転写量が増えていると考えられる。
: Catalase は酸化ストレスでプロモーター活性が低下,mRNA の安定性が上がっていると思われる。