Catechol-O-methyltransferase (COMT)

12-8-2013 updated

カテコールアミン catecholamine の分解を行う酵素である(EC 2.1.1.6)。ドーパミン dopamine,ノルエピネフリン norepinephrine,エピネフリン epinephrine などの分解に関与する。

 

シナプス後ニューロンに存在する。

 

  1. ドーパミン分解
  2. ノルエピネフリン分解
  3. ヒトのCOMT多型とその影響
  4. 発現部位


ドーパミン分解

図は Wikipedia より転載。

 

メチル基を付加することで,ドーパミンを分解経路に乗せる。



ノルエピネフリン分解



ヒトのCOMT多型とその影響

Researcher


病気との関連


> Val/Met の遺伝子型は,ドーパミン系の異常を通じて mood disorder, 統合失調症など相関している(1D)。

報酬系の活性化との関連を調べた fMRI study


> 158番目の Val が Met に置き換わっている変異があり,Val/Val, Val/Met, Met/Met の3通りがある(1I)。

: 熱安定性がこの変異によって変化するため,ヒト体温での活性は VV > VM > MM である。

: MM のヒトのCOMT活性は,VVのヒトよりも25-75%低い。ドーパミン濃度が高いことが予想される。

COMT の多型で,ドーパミンによって制御される報酬系 reward system の活性が変化することを示した論文がある(1)。

嬉しいこと(食事など)に対する期待によって活性化される報酬系は,線条体 striatum,上前頭回 left sperior frontal gyrus,dorsolateral PFC という領域を活性化することがわかっている。

 

右の図では,この活性化の度合いが Met/Met > Val/Met > Val/Val であることが示されている。

つまり,同じような現象でも,遺伝子のタイプによって感じる嬉しさが異なることを意味している。

 

報酬系の活性は,過食症や薬物依存とも関係がある。これらの病気にかかりやすい人を遺伝子型によって選別できてしまう可能性もある。



発現部位 Expression site

Researcher


> Prefrontal cortex で主に働く。線条体 striatum のドーパミン量には,あまり影響を及ぼさない(1I)。

: Midbrain, striatum, 海馬では DAT の働きが強い。DAT は prefrontal cortex ではあまり働かない。


References

  1. Dreher et al. 2009a. Variation in dopamine genes influences responsivity of the human reward system. PNAS 106, 617-622.