Cu/Zn superoxide dismutase

6-1-2017 Last update

 

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  1. 概要
  2. 細胞内局在
  3. 構造
  4. C. elegans
  5. D. melanogaster
  6. Mouse
  7. ストレスによる発現変化
  8. 自然界での役割

関連項目



概要: Cu/Zn SODとは

EC1.15.1.1. スーパーオキシドジスムターゼ(SOD; superoxide dismutase)は,活性酸素であるスーパーオキシド O2- と水素イオン H+ から,酸素と過酸化水素を生成する反応を触媒する酵素である。

 

2O2- + 2 H+ -> O2 + H2O2

 

この反応は,1種類の物質であるO2- が互いに反応して O2 および H2Oになる反応であり,不均化反応 dismutation の一種である。

 

SOD の活性中心には2価の金属 Cu, Fe, または Mn が含まれる。Cu/Zn SOD は活性中心に Cu を含む SOD で,主に真核生物の細胞質に局在する。Zn は構造の安定化に重要であると考えられている。

 


細胞内局在

> Cu/Zn SODは細胞質,Mn SODはミトコンドリア,Extracellular SODは細胞外というのが一般的理解。

> ミトコンドリアのintermembrane spaceにもあると書かれている(1)。


構造


Caenorhabditis elegans


線虫 C. elegans では,sod の寿命への寄与は大きくないと考えられている。C. elegans は5つの sod 遺伝子をもっているが,それらを様々な組み合わせでノックアウトしても大きな寿命の短縮が認められないためである(10I, 7)。

> sod-1とsod-5の2つのisoformがある。sod-1が主要なisoformで,sod-5はdauerで主に発現(6)。

> 過剰発現で少し寿命が長くなり,deletionでは少し短くなったり変わらなかったり(6)。

> 文献6では,sod-1はわずかにwtの寿命に影響するかもしれないが,その役割はminorと結論づけている。 

> daf-2 backgroundでsod-1を欠損させると,寿命はわずかに延長(6)。

> sod1-5をそれぞれKOしても寿命は変わらない。sod-1のノックアウトは低温による長寿を阻害(7)。

 

> sod-5がインスリン様シグナルIISを制御するという仮説が提唱されている(6)。

: sod-5はDAF-16の標的なので,IISが弱まると発現量が増え,local H2O2量を増やす。

: 過酸化水素は,IISを弱めるDAF-18/PTENを不活性化するので,さらにIISが強くなる。

: このpositive feedbackが,sod-1からsod-5が重複した理由であると考えている。

 

 


Drosophila melanogaster

> タンパク質制限による寿命の延長には,炭水化物量が多いときにのみCu/Zn SODが必要である(10R)。

: 餌のタンパク質/炭水化物比率の変化で寿命が変化する。タンパク質制限ではTORシグナルが低下。

: SOD1 の過剰発現は,寿命延長の十分条件ではない。

: タンパク質制限で寿命が延びたときにも,酸化ストレス耐性は上がらない。

過剰発現実験と寿命


Drosophilaで,SODの過剰発現によって寿命が延びる例は少なくとも4例ある(文献2,3とMn SODが2例)。

その後の検討から「野生型の寿命を延ばす効果はなく,短命な系統では効くかもしれない」が結論っぽい。

 

> Human SOD1 (Cu/Zn SOD) overexpression in motorneuron -> 40%長寿(2)。

: motorneuronだけで寿命が延び,さらに SOD null mutant の短寿命もレスキューした点が重要。

: もともとDrosophilaでは神経のCu/Zn SOD発現が低く,それを補っているだけという批判も(4)。

 

> Cu/Zn SOD, catalaseを3コピーずつトランスジェニックしたら,寿命が長くなった(3)。

: それぞれの遺伝子のトランスジェニックでは,寿命は延びなかった(3)。

: しかし,同じグループがのちに抗酸化酵素過剰発現で寿命が延びるのは短命の系統のみと発表(4)。


Mouse

トランスジェニックマウス Transgenic mice


> Human genome fragment containing the SOD1 gene Tg mice

: Cu/Zn SOD活性は2-5倍高く,MEFのパラコート耐性も高いが,寿命は野生型と同じ(1)。

 

> Cu/Zn SOD & catalase, Cu/Zn SOD & Mn SOD double transgenicも,寿命は野生型と同じ(1,5)。

ノックアウトマウス KO mice


ホモノックアウト

Cu/Zn SOD-/- mice は以下のような表現型を示す。

 

> 酸化ストレスに弱く,寿命も野生型より30%短い(1)。

> DNAに蓄積する酸化ダメージは,野生型マウスの数倍高い(1)。

> 卵巣機能不全を示し不妊である(1)。

> 睾丸が小さくなり,細胞間に隙間が生じる(9)。熱ストレス下で精原細胞の機能が阻害される。

: アポトーシスが増え,熱ストレス後の細胞の精原細胞の生存率が低下する。

: これは ROS scavenger によってされる。熱ストレスで生じる活性酸素が増えていると思われる。

ヘテロノックアウト

> Cu/Zn SOD+/- miceの寿命は野生型と同じで,酸化ストレス耐性に関する情報は2009年時点ではない(1)。


自然界でのCu/Zn SODの役割

> 寿命の長い女王アリよりも,寿命の短いワーカーの方がCu/Zn SODの発現量や活性が高い(8)。

> 進化によって寿命が延長するときに,Cu/Zn SODの変化は必要条件ではないことを示している(8)。


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References

  1. Perez 2009a (Review). Biochem Biophys Acta 1790, 1005-1014.
  2. Parkes 1998a. Nat Genet 19, 171-174.
  3. Orr 1994a. Science 263, 1128-1130.
  4. Orr 2003a. J Biol Chem 278, 26418-26422.
  5. Perez 2009b. Aging Cell 8, 73-75.
  6. Gems 2009a (Review). Cell Cycle 8, 1681-1687.
  7. Yen 2009a. Mech Ageing Dev 130, 173-178.
  8. Parker 2004a. Decreased expression of Cu-Zn superoxide dismutase 1 in ants with extreme lifespan. Proc Natl Acad Sci USA 101, 3486-3489.
  9. Ishii et al. 2005a. Accelerated impairment of spermatogenic cells in sod1-knockout mice under heat stress. Free Radic Res 39, 697-705.
  10. Sun et al. 2012a. Nutrient-dependent requirement for SOD1 in lifespan extension by protein restriction in Drosophila melanogaster. Aging Cell 11, 783-793.