C. elegans の寿命は多くの遺伝子の変異により変化するが,その多くは DAF-16 を必要とする。
C. elegans では,daf-2 遺伝子(インスリン/IGF受容体をコード)の変異体は寿命が長くなることがよく知られている(4R)。この長寿表現型には DAF-16 が必要である(daf-2 & daf-16 double mutant は寿命が長くない; 文献5)ことから,DAF-16 と寿命の関係が盛んに研究されるようになった。
> daf-2 変異体では,さまざまな組織で DAF-16 の核への蓄積がみられる(2I)。
> age-1 変異体では27℃にするとやや核に局在する。完全に核局在しなくても dauer へ移行できる(7)。
> daf-2, daf-16 double mutantの一部の組織で DAF-16 を発現させ,寿命への影響を調べた報告(2R)。
: 神経では 5-20% 程度回復。予想外に短かったのでいろいろ検討したが,やっぱりそうだった。
: 一番回復したのは腸(脂肪組織)で,50-60%。
: ただし,dauer formationへの寄与が最も大きいのは神経 neuron だった。
> DAF-16:GFP fusion protein を C. elegans で発現させ,ストレスによる局在変化を調べた論文(7R)。
: DAF-16:GFP はほぼ全身,とくに神経系で強く発現する。Functional であることも確認されている。
: DAF-16:GFP を過剰発現すると成長が遅くなる。逆に,DAF-16 をノックダウンすると成長が早い。
: DAF-16:GFP を発現させると,寿命とストレス耐性が増大する。
: 飢餓,熱ストレス,酸化ストレスで DAF-16:GFP は核へ移行する。UV 処理ではなぜか移行しない。
C. elegans では,少なくとも以下の8種類のカロリー制限 dietary restriction 法がある(6I)。
このなかで DAF-16 の果たす役割は実は小さく,sDR による寿命延長にしか必要でない(6I)。他の文献からの関連する記述は以下の通り。
> DAF-16 は IISの低下に伴う寿命延長には必要だが,DRによる寿命の延長に必要ではない(1)。
Drosophila でも FoxO は DR に伴う寿命延長に必要ではない(6I)。哺乳類ではまだテストされていない。
> Sir2 overexpressionによる寿命延長にはDAF-16が必要(1)。
: 哺乳類でも,Sir2 ortholog SIRT1はFOXO3を直接脱アセチル化して活性を制御する(3R)。
> Germ cellsを取り除くとC. elegansは長寿になるが,このときにintestine DAF-16がはっきり核移行する(1)。
> 熱ストレスでもDAF-16は核へ移行する(1)。