成長ホルモン(ヒト) Growth hormone, GH (human)

2019/04/10 Last update

 

このページは 成長ホルモン @本家UBサイト に恒久的に移転しました。このページもネット上に残っていますが、最新の情報はリンク先を参照して下さい。

 

  1. 概要: GH とは
  2. GH と成長
  3. GH と代謝
  4. GH と性成熟
  5. GH と他のホルモンの関係
  6. GH 産生細胞
  7. GH 過剰症(先端巨大症 acromegaly)
  8. GH と飢餓

関係するホルモン

 

関連する遺伝子

  • ホルモン感受性リパーゼ HSL
  • 成長ホルモン受容体 GHR


概要: 成長ホルモン(GH)とは

成長ホルモン(growth hormone, GH)は主に脳下垂体 pituitary で産生されるペプチドホルモンで,動物の成長,代謝を制御する。脊椎動物からのみ発見されている。

 

ヒト GH は 191 個のアミノ酸から成り,分子量は 22 kDaである。

成長ホルモンの基本的な機能。英語版 Wikipedia より。筋肉などに作用して成長を促進するほか,肝臓からのインスリン用成長因子 I(IGF-I)分泌を促進することでも成長に寄与するとされる。


上流のシグナル

脳下垂体からの GH の分泌は,以下のようなシステムで制御されている。

  1. GHRH (growth hormone-releasing hormone): 視床下部 hypothalamus から分泌される。細胞内 cAMP およびカルシウムイオン濃度を上げることで,GH の産生量を主に転写レベルで制御している(3)。
  2. Somatostatin: 視床下部,膵臓のランゲルハンス島 D 細胞,消化管の内分泌細胞などから分泌されるホルモンで,GH産生を抑制する。
  3. グレリン ghrelin: 胃から放出されるホルモンで,GH 分泌を促進するほか,独自に食欲 appetite の増進作用ももっている。
  4. IGF-I によるフィードバック制御: IGF-I は GH 分泌を負に制御する。

下流のシグナル

GH は細胞膜表面にある GH 受容体(GHR)に結合し,様々な経路にシグナルを伝える。以下の経路がよく知られている(2,3)。

  1. GHR - JAK2 - STAT
  2. GHR - JAK2 - Sch - Grb2 - SOS - Ras - MEK1/2 - MAPK (Erk)
  3. GHR - IRS - PI3K - Akt
  4. また,PLC/DAG/PKC なども下流にあることが知られている。

GH と成長


GH と代謝

GH による代謝制御の詳細は,英語のページ にまとめました。ここでは概要のみを記します。


脂質代謝

GH の脂質代謝に対する作用には 2 面性がある。脂肪細胞の分裂と分化を促進するとともに,成熟脂肪細胞に対しては脂肪分解 lipolysis を誘導し,脂肪を血液中に放出させる。

 

> GH は前駆脂肪細胞の分裂と分化を促進する(1D)。

: Early exposure to high levels of GH can lead to a large pool of adipocyte precursor cell.

: GH  欠乏症の患者は,fat cell volume は健常者よりも大きいが,fat cell number が少ない(3)。

 

> GH は,ブタの脂肪組織で ACC の活性,mRNA量,タンパク質量を低下させる(3)。

> GH の LPL に対する作用は ambiguous である(3)。


GH と性成熟

> ウシ、ラットの卵母細胞を GH を含む培地で培養すると成熟が早くなることなどをまとめた総説(4)。

: Cumulus cells が存在しないとGH による成熟促進はみられない。

: 卵母細胞自身には GH レセプターはみられずcumulus cells に存在する(RT-PCR)。

: また、GH は卵母細胞および granulosa にみられ cumulus cells にはない(RT-PCR)。

: したがって GH のオートクラインが存在すると考えられる。

: ウシでは GHRH を検出することはできなかった。ラットではその存在効果ともに実証されている。

: ラットでは in vitro maturation は IGF-I でも誘導される。ウシでは GH による直接の効果と考えている。



GH と他のホルモンの関係

IGF-I

インスリン insulin

> 血中 GH 量が高いと,血中インスリン量も高くなる傾向がある。

: アクロメガリーの患者,GH の投与,GH transgenic models などで確認されている。



GH 産生細胞

> 脳下垂体 pituitary の somatotrope で産生される(1)。

: 下垂体に含まれる細胞の 30 - 50% が somatotrope である。


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References

  1. Gahete et al. 2011a. Elevated GH/IGF-I, Due to Somatotrope-Specific Loss of Both IGF-I and Insulin Receptors, Alters Glucose Homeostasis and Insulin Sensitivity in a Diet-Dependent Manner. Endocrinology 152, 4825-4837.
  2. Waters et al. 2006a (Review). New insights into growth hormone action. J Mol Endocrinol 36, 1-7.
  3. Chaves et al. 2013a (Review). The metabolic effects of growth hormone in adipose tissue. Endocrine 44, 293-302.
  4. Bervers and Izadyar 2002a (Review). Role of growth hormone and growth hormone receptor in oocyte maturation. Mol Cell Biol 197, 173-178.