成長ホルモン(growth hormone, GH)は主に脳下垂体 pituitary で産生されるペプチドホルモンで,動物の成長,代謝を制御する。脊椎動物からのみ発見されている。
ヒト GH は 191 個のアミノ酸から成り,分子量は 22 kDaである。
成長ホルモンの基本的な機能。英語版 Wikipedia より。筋肉などに作用して成長を促進するほか,肝臓からのインスリン用成長因子 I(IGF-I)分泌を促進することでも成長に寄与するとされる。
脳下垂体からの GH の分泌は,以下のようなシステムで制御されている。
GH は細胞膜表面にある GH 受容体(GHR)に結合し,様々な経路にシグナルを伝える。以下の経路がよく知られている(2,3)。
GH による代謝制御の詳細は,英語のページ にまとめました。ここでは概要のみを記します。
GH の脂質代謝に対する作用には 2 面性がある。脂肪細胞の分裂と分化を促進するとともに,成熟脂肪細胞に対しては脂肪分解 lipolysis を誘導し,脂肪を血液中に放出させる。
> GH は前駆脂肪細胞の分裂と分化を促進する(1D)。
: Early exposure to high levels of GH can lead to a large pool of adipocyte precursor cell.
: GH 欠乏症の患者は,fat cell volume は健常者よりも大きいが,fat cell number が少ない(3)。
> GH は,ブタの脂肪組織で ACC の活性,mRNA量,タンパク質量を低下させる(3)。
> GH の LPL に対する作用は ambiguous である(3)。
> ウシ、ラットの卵母細胞を GH を含む培地で培養すると成熟が早くなることなどをまとめた総説(4)。
: Cumulus cells が存在しないと,GH による成熟促進はみられない。
: 卵母細胞自身には GH レセプターはみられず,cumulus cells に存在する(RT-PCR)。
: また、GH は卵母細胞および granulosa にみられ cumulus cells にはない(RT-PCR)。
: したがって GH のオートクラインが存在すると考えられる。
: ウシでは GHRH を検出することはできなかった。ラットではその存在,効果ともに実証されている。
: ラットでは in vitro maturation は IGF-I でも誘導される。ウシでは GH による直接の効果と考えている。
> 血中 GH 量が高いと,血中インスリン量も高くなる傾向がある。
: アクロメガリーの患者,GH の投与,GH transgenic models などで確認されている。
> 脳下垂体 pituitary の somatotrope で産生される(1)。
: 下垂体に含まれる細胞の 30 - 50% が somatotrope である。