GLUT4 (glucose transporter 4) とは,主に筋肉と脂肪組織で,インスリン 依存的な グルコース の取り込みを行うトランスポーターである。
> 脂肪細胞では,グルコース代謝の律速段階であると考えられている(2I)。
一般に,細胞外の方が細胞内よりもグルコース濃度が高いため,GLUT は濃度勾配に従って細胞内に特異的にグルコースを取り込む(4)。つまり受動的かつ選択的な facilitated passive transport である。食べたグルコースを腸管から吸収するときには,濃度勾配に逆らった active transport が必要となるため,GLUT ではないトランスポーターが関与する(4)。
イラストレイテッド細胞分子生物学 では,以下の 3 種の細胞で濃度勾配に逆らったグルコースの輸送が必要になるとしている。
GLUT family には少なくとも 14 のタンパク質が含まれ,うち 11 がグルコースの取り込みに関与する(4)。GLUT 1 から 5 が一般に発現しているアイソフォームである。表は文献 3,4 の内容に基づく。哺乳類のデータと思われる。内容が増えてきたら,それぞれのアイソフォームのページも作成する。
タイプ | 発現組織 | グルコースとの KM | 特徴 |
GLUT 1 | 全ての組織 | 1 mM |
Basal のグルコース取り込みに用いられる。
血中グルコース濃度は 4 - 8 mM なので,常に一定量のグルコースを取り込んでいる。 HIF-1 の発現制御を受けている。 |
GLUT 2 | 肝臓,β 細胞,腎臓 | 15-20 mM |
KM が高い,つまりグルコースとの親和性が低い。血糖値が上昇したときに働くトランスポーター。参考: 解離定数とは
膵臓での血中グルコース量のモニター,余剰グルコースの肝臓への uptake などを行う。
肝臓および腎臓では,糖新生 のために細胞内の方がグルコース濃度が高くなることがある。このとき,GLUT 2 が細胞外へグルコースを放出する。 |
GLUT 3 | 全ての組織 | 1 mM | Basal 状態の取り込み。GLUT 1 とどう使い分けているのか? |
GLUT 4 | 筋肉,脂肪細胞 | 5 mM | インスリン依存的なグルコースの取り込みを担当する。この表の他の GLUT, つまり 1, 2, 3 および 5 はインスリンに依存しないトランスポーターである(4)。 |
GLUT 5 | 小腸,精巣 | - | 主にフルクトースを透過させる。 |
GLUT 4 は,通常は細胞内の vesicle に存在する。Vesicle はゴルジ体に結合している。インスリンによってこの細胞内プールから細胞膜へ移行してグルコースを取り込むが(4),膜移行のあとにさらに活性化されるステップが必要であると考えられている。
グルコースを取り込んだ後は,エンドサイトーシスによって細胞内に戻り,リサイクルされる(4)。
> 骨格筋では,収縮によっても活性化する(2I)。
> 転写調節には,MEF2, SP1, C/EBP, PPARγ, HIF-1α, SREBP-1c, Klf15, NF1などが関わっている(2I)。
> リガンドと結合したPPARγ1, 2はGLUT4の転写を活性化する(1)。
> PPARγはMAPKにSer112でリン酸化され,その場合はリガンド非結合状態でGLUT4転写を抑制する(1)。
> 遊離脂肪酸は原則としてインスリンシグナルを阻害し,GLUT4を抑制する。これにはIkBが関与する(1)。
> アラキドン酸はGLUT4の転写を抑制する(1)。
> 脂肪酸とGLUT4の間の転写因子にはPPAR, hepatic nuclear factor 4, SREBP, nuclear factor Yがある(1)。
> トレーニングで骨格筋GLUT4のmRNA量が増える(2I)。