関連項目
Heat shock protein 70 (HSP70) とは,熱などのストレスに応じて発現が誘導される約 70 kDa のタンパク質である。熱ストレスによる誘導が最初に報告されたためにこの名前がついているが,のちに様々なストレスで誘導されることが明らかになった。他の分子量のストレス誘導性タンパク質(HSP60, HSP90 など)とともに,ストレスタンパク質 stress protein と総称される。
HSP70 は,もっとも配列の保存性が高く,バクテリアから高等生物まで普遍的に存在するストレスタンパク質である。
なぜか,細胞骨格タンパク質であるアクチン actin と 3 次構造が類似しており,共通の祖先をもつ paralog である可能性が考えられている(7)。
> 7 - 9 残基の疎水性アミノ酸を認識して結合する(2)。
: 変性タンパク質は,フォールディングがほどけて疎水性アミノ酸が分子表面に出てくる。
: HSP60 は molten globule 構造を認識し,HSP70 とは結合様式が異なる。
> ATP-bound state では基質との結合,解離が早く,ADP-bound state では遅い(2)。
> 標的の最終的な構造に関する情報は持っておらず,ただ非生産的な相互作用を軽減する(2)。
> DnaK(HSP40)は,HSP70 の ATPase を活性化する機能をもつ(2)。
> HSC70 の ATPase 活性は,in vitro で cations に影響される(2)。
> Mg-塩基はHSC70に結合し,他のカチオンと一緒に ATPase 活性を低下させる(2)。
> 大豆のHSC70は,free nucleotideを基質として利用する(2)。
> basal ATPase活性は,Kイオンで10倍程度に増大する(2)。
> in vitroでは,5-12残基のペプチドが活性を増大させる。基質で活性化されるのは珍しい(2)。
> 大腸菌DnaJは,DnaK (HSP70), GrpE, targetと4量体を作り,ATP加水分解を促進する(2)。
> HSP70のin vivoでのATPase活性は低く,そのためにATP-bound formが多い(1)。
: 一般に,なかなか触媒できない基質とは,その分結合性が高くなる。
> ショウジョウバエで,HSP70 の過剰発現による寿命の延長が報告されている(5R)。
: HSP70 を含むゲノム領域が重複した系統で,熱ストレスによって発現量を増やしている。
: HSP70 量は 10-12% 増加している。産仔数は変化しない。
> C. elegans でも,ミトコンドリア型の HSP70 (mortalin) を過剰発現すると寿命が延びる(7R)。
: この HSP70 は,真核生物よりも大腸菌の DnaK に相同性が高い。
: マウスには mot-1, mot-2 が存在。ヒトでは1種類で,マウス mot-2 に相同性が高い。
> C. elegans では,加齢によって発現量は変化しないが,dauer と daf-2 変異体で発現量が高い(6R)。
シグナル伝達との関わり
> 通常の分子シャペロンとしての機能の他に、多くのシグナル伝達系と関連して働いている(3)。
> PKCと結合し、リン酸化による制御を受けている。
> CaN, CaM(カルモジュリン)系とも関連する。
> カルシウムイオン依存的な自己リン酸化も知られているが、リン酸化との詳細な関係は不明。
翻訳後修飾
> リン酸化,ADP-ribosylation, N-methylationなどの翻訳後修飾を受ける(2)。
> vivoでは,autophosphorylationもしくはキナーゼによるリン酸化を受ける。これは核酸結合を阻害し,活性が低下(2)。
mRNAレベルの発現制御
> 鳥類の精子形成過程で,熱ストレスがポリAを長くすることが知られている(4)。
小胞体局在型BiP
> 小胞体には,BiPというHSP70ホモログが存在する(2)。
Hipとの関連
> HipはHSC70とADPの解離を阻害し,シャペロン活性を増大させる(2)。
Hopとの関連
> HopはADPリリースを促進する(2)。