食欲 appetite,代謝 metabolism などを制御するホルモンであるレプチン leptin は,細胞膜上にあるレプチン受容体 leptin receptor への結合を通じてその作用を発揮する。
1 回膜貫通型 の受容体で,class I cytokine receptor である glycoprotein 130 (gp 130) に似る(3I)ため,gp 130 family の受容体として分類されている。
5 つのアイソフォーム a, b, c, d, e が存在することが報告されている(5)。
> 肥満モデル Zucker rat では,806 番目の A が C に変異しており,Gln269Pro の置換をもたらしている(3R)。
ヒトのレプチン受容体遺伝子 LEPR は,染色体 1p31 に座乗する(1I)。20 のエクソンから成る。選択的スプライシングにより,少なくとも 6 個の mRNA がある(6)。
1, 2 番目のエクソンを共有する leptin receptor overlapping transcript (LEPROT) および leptin receptor overlapping transcript-like protein 1 (LEPORTL1) があり,染色体上でタンデムに並んでいる。これらは両生類,鳥類,魚類にも存在し,原則として染色体上に並んで位置している。Leptin receptor gene-related protein (LERGRP) と呼ばれたこともあるが,同じ遺伝子である。成長ホルモン growth hormone やレプチン受容体の細胞膜局在を制御し,これらのホルモンへの感受性をコントロールすると考えられている(9D)。
> 894 残基の short form と 1162 残基の long form がある(3R)。C 末端側が異なる。選択的スプライシング。
: 細胞内には,JAK-STAT 系にシグナルを伝える Box 1 および Box 2 があるが,short は Box 1 のみ。
> さらに,膜貫通ドメインをもたない 805 残基の Ob-Re もある(3R)。
マウスにも LEPROT 遺伝子が存在する。
> Knockdown するとレプチンシグナルが増強され,肥満を抑制する(8)。
視床下部 hypothalamus で mRNA 量が多く,pituitary, lung, gonad, liver でも発現がみられる(7)。
Long isoform (RT-PCR)(3R):
> 脂肪組織,肺,脳(視床下部,大脳皮質,小脳),小腸,腎臓,精巣,脾臓。
> 胃と肝臓では少ない。心臓ではバンドが見えない。
Short isoform (RT-PCR)(3R):
> 脂肪組織,肺,脳(視床下部,大脳皮質,小脳),小腸,腎臓,精巣,脾臓。
> 胃,肝臓,心臓でも long isoform よりも発現が多そう。
OB-Re (without transmembrane domain) (RT-PCR)(3R):
> Long isoform とほぼ同じパターン。
これまでに,Q223R, K109R, K656N の三つの非同義置換と肥満 obesity との関係が調べられている(2I)。個々の解析では相関があるとする報告もあるが,2002, 2005および2011年に発表された meta-analysis では相関が証明されなかった(2R, 2D)。
これらのことから,LEPR の変異は単独でヒトの肥満の原因となるには不十分で,肥満は他の要因との複合的作用であろうと考えられている(1D)。
> 2011年に発表された meta-analysis では相関なし(2R)。
: 2002年および2005年の systemic review でも,有意な相関はなかった。
: ただし,BMI cut-off > 25 としている報告ではQ223R と BMI の相関があった。意義は不明。
: なお民族との相関はあり,とくにアジア人で Q223R, K109R の置換が多い。台湾の原住民は例外。
> 40歳以上の女性において,K109RおよびQ223Rを同時にもつ場合にBMIが高いとした報告がある(4)。
: 40歳以上の男性,40歳未満の女性では差がなく,40歳未満の男性は対象に含まれていない。
: この2つの多型は,日本人で報告されている多型のうち比較的変異が多いものである。
> Leptin との結合性が低下し,レプチン抵抗性を引き起こす(1I)。
> Q223Rとコレステロールおよびトリアシルグリセロール代謝異常との関連が多く報告されている。
: 家族性 hyperlipidemia(高コレステロール,TAG,apoB)との相関がある(1I)。
: 肥満との相関はないが,肥満したヒトの試験群の中で高血中TAGと相関していた(1R)。
: 痩せたヒトの試験群でも,RRの遺伝子型は高コレステロールと相関していた(1R)。
> レプチン受容体b は Janus kinase シグナルを活性化する(5)。
: この受容体は視床下部 hypothalamus で主に発現している。
: 視床下部で活性化すると alpha-melanocyte-stimulating hormone が分泌される。
: このホルモンは type 4 melanocortin receptor を活性化し,食欲を減衰させエネルギー消費を増やす。