10-7-2014 updated
EC1.15.1.1. スーパーオキシドジスムターゼ(SOD; superoxide dismutase)は,スーパーオキシド O2- と水素イオン H+ から,酸素と過酸化水素を生成する反応を触媒する酵素である。
2O2- +
2 H+ -> O2 + H2O2
この反応は,1種類の物質であるO2- が互いに反応して O2 および H2O2 になる反応であり,不均化反応 dismutation と呼ばれる反応の一種である。
SOD の活性中心には2価の金属 Cu, Fe, または Mn が含まれる。Mn SOD は活性中心に Mn を含む SOD で,真核生物のミトコンドリアに局在する。また,一部のバクテリア(8D)や甲殻類では,細胞質型の Mn SOD (cytoplasmic Mn SOD) の存在も報告されている。
> Mn SODが欠損すると,clonal and chronological lifespanともに短くなる(2)。
> Mn SODの過剰発現で,clonal and chronological lifespanともに長くなる(2)。
> 哺乳類AktのオルソログSch9を欠損すると,酵母のchronological lifespanが長くなる(1)。
> これは Mn SOD をコードする SOD2 遺伝子の欠損で打ち消される(1)。
: 酵母の寿命にも Akt-Mn SOD 系が重要であることを示す結果である。
> C. elegans には,sod-2, sod-3 の2つの Mn SOD 遺伝子がある(9R)。
: これらは共通した exon-intron 構造をもっており, 5 つの exon から成る。それぞれ染色体 I, X に座乗。
: アミノ酸同一率は約 86 %で,N 末端にミトコンドリア移行シグナルがある。
: 大腸菌で発現させたときに,どちらも活性がある(zymography)。
> sod-3 の発現量は通常低いが,dauer になると増大する(14)。
> 長寿である daf-2 mutant で,sod-3 の mRNA 量が多い(10R)。
> sod-2 と sod-3 の2つの isoform がある。両方を欠損しても寿命は変わらない(4)。
: sod-2 欠損株では,ミトコンドリアの機能不全や成長遅延がみられる。
: おそらくミトコンドリア機能不全に由来するが,sod-2 deletion で逆に寿命が延びる例もある。
> 別のレビューにも,Mn SOD遺伝子が欠損しても寿命には影響なしと書かれている(2)。
> daf-2 backgroundでsod-2を欠損させても寿命は変化なし,またはわずかに減少(4)。
> daf-2 backgroundでsod-3を欠損させると寿命は変化なし,または大幅に延長??(4)。
> ただし,抗酸化能は Mn SOD遺伝子の欠損で低下すると思われる。
: 98% oxygen という hyperoxia 条件での生存時間は,Mn SOD 欠損で著しく短くなる(7)。
> sod-3 遺伝子の5'上流域には DAF-16 の結合サイトがあり,この分子による制御が示唆される(11R)。
: 配列は ttgtttacg で,哺乳類のDAF-16 homologues, Foxo の認識配列と共通している。
> Mn SOD 遺伝子の欠損株は postnatal lethal である(2)。
> Actin promoter で Mn SOD を過剰発現させると寿命が 30% 程度まで長くなる(3)。
: FLP-out 法で複数の系統を作製し,Mn SOD の酵素活性が高いほど寿命が長いことを示している。
: ただし,FLP-out は熱処理で発現を誘導するので,副作用があるかもしれない(5I)。
> 2003年には,もともと短命な系統でないと Mn SOD 過剰発現で寿命は延びないとする論文も(6)。
> 多くの報告が,健康な野生型の寿命の約半分,25-35日程度で議論していると警告している(6)。
> Dexycycline という薬品を使った tet-on 法で Mn SOD を過剰発現させた論文(5)。
: Mn SOD の過剰発現で寿命が20%延長したが,酸化ストレス耐性は変わらなかった。
: 過剰発現株でマイクロアレイ。Hydrogen peroxide signaling cascade の遺伝子発現が増大。
: 過剰発現株と線虫の daf-2 mutant,過酸化水素処理した Drosophila の発現パターンが似ていた。
: Mn SOD 過剰発現は,抗酸化ではなく,何らかのシグナルを変化させて寿命を延ばすのではないか。
Drosophila Mn SOD の転写制御機構は,あまり詳しく解析されていないようである。少なくとも,他生物のようにインスリン様シグナルの関与を示す論文はみつからない。
> Mn SOD 量を制御するゲノム領域の連鎖解析が行われている(12R)。
: ゲノムの一部を消去した結果から,少なくとも1個の enhancer, 4個の suppresor がありそう。
: 転写制御を行っている領域にある転写因子は,cyclin T, optix, CG12361 など。
Homo knockout mice
> Mn SOD-/- は数日〜数週間で cardiomyopathy or neuordegeneration で死亡。系統による(2)。
Hetero knockout mice
> Mn SOD+/- miceは全ての臓器で Mn SOD の発現が50%程度で,酸化ストレスに弱い(2)。
> しかし,Mn SOD+/- の寿命は野生型と変わらない。
Transgenic mice
> Beta-actin promoterで Mn SOD を発現するマウス。酵素活性は2倍程度だが,寿命は変わらない(2)。
: 寿命が延びた例も報告されている(Hu et al.)。
: Cu/Zn SOD との double transgenic でも寿命は延びなかった(2)。
> 3T3-L6 cell line では,FOXO3a (FKHR-L1) による直接の転写制御を受ける(13R)。
: 同じ現象がヒト細胞株 DLD-1 でも確認されたと書いてあるが,どこまで同じか詳しく読んでいない。