Na+/K+-ATPase (EC 3.6.3.9)は,ATP 加水分解のエネルギーを利用して細胞内外のイオン濃度の勾配を作り出す膜タンパク質である。単にナトリウムポンプとも呼ばれる。
ATP 1 分子が加水分解されるとき,細胞内から 3 分子の Na+ を汲み出し,細胞外から 2 分子のK+ を取り込む。その結果,右図(2)のように K+ 濃度が細胞内で高くなり,細胞内が負に帯電するようになる。
参考: 膜電位 membrane potential
このことは,塩化カリウム KCl を静脈注射すると細胞外の K+ 濃度が上がって死亡する ことから覚えることができる。
細胞膜に存在するイオンなどの通り道となるタンパク質は,この分子のように ATP などのエネルギーを使ってエネルギー勾配に逆らった輸送をするポンプ pump と,熱力学的に自然な方向の輸送のみを行うチャネル channel に分類される(2)。
ATP の分解には,他の多くの酵素と同じように Mg2+ が必要である(5)。
> この分子は P-type ATPase というファミリ−に属する(5)。
: このほか ABC transporter (ATP-binding cassette) というグループがある。
: ヒトのゲノムには 70 の P-type ATPase があり,基本的に同じ仕組みで膜輸送を行っている。
: ABC transporter はヒトで 150 個以上,E. coli で 79 個が報告されている。
ATP 加水分解に伴うイオンの移動をもう少し詳しくみると,次の図のようになる(3)。
> 細胞の膜画分を抽出する実験で,plasma membrane の selective marker として使用可能(1)。
: この酵素の選択的阻害剤である ouabain とともに使用している。