7-19-2016 updated
PKA は 10 nM 程度の cAMP によって活性化されるリン酸化酵素である(1)。
下の図(英語版 Wikipedia より)の A は活性化機構の概要を示している。Berg の生化学(1)に載っている図と似ているが,やや簡略化されている。以下の説明は,文献 1 に準拠している。
Pseudosubstrate sequence の配列は Arg-Arg-Gly-Ala-Ile であり,基質の認識配列は Arg-Arg-X-Ser-Z or Arg-Arg-X-Thr-Z である(1)。ただし,X は小さいアミノ酸残基,Z は大きな疎水性残基である。Arg の一方は Lys に変わっても良いが,親和性が低下する。
これは,酵素活性を示す部位以外の場所にある物質が結合することで,酵素の活性を調節するというアロステリック阻害 allosteric inhibition の例として有名である。
> PKA の 40 - 280 AA は conserved catalytic core を形成している(1)。
: 原則として全ての kinase で保存されている構造である。
In vitro の実験からはPKA の活性化はグルコース消費を促進すると考えられてきた(3I)。しかし,脳 brain では,以下のように逆の結果も報告されている。しかし,下記の 2 つの論文では cAMP が PKA にのみ作用しているという保証はない。
> db-cAMP 25 nmol を SD rat 脳の striatum に注入すると,2DG-Glc の取り込みが低下する(3R)。
: Dibutylyl cAMP (db-cAMP) は,膜を通過する cAMP analog である。
> PKA 阻害剤 Rp-cAMPS 100 nmol を 脳の striatum に注入すると,グルコース代謝が増大(2R,3R)。
: 自由に運動している Sprague-Daxwley rat で測定している。
: 麻酔中のラットでは Rp-cAMPs の影響が見られないことから,意識との関係を議論している。
: 意識の程度は麻酔の種類で大きく異なるため,さらなる検討が必要。