5-19-2014 updated
VGSC には,ヒトでは少なくとも 9 個のアイソフォームがあり,中枢神経や感覚神経など,体の各部分に分布している。VGSC が正しい電位に応じて開口することは,正常な神経伝達に極めて重要である。
たとえば,VGSC の電位依存性がおかしくなると異常な発火が起こり(3),感覚神経でこれが起こると神経痛 neuropathic pain の原因となり,中枢神経で起こると幻覚 hallucination や認知能力の低下の原因となる。
このような場合,VGSC blocker は VGSC の活動を抑えるための薬品として有用であるが,チャネルに対する特異性が大きな問題となる。
> 多くのブロッカーは,ドメイン4に結合する(1)。
> 不整脈 antiarrhythmics の治療に使われる局所麻酔と,抗てんかん薬に分けられる(1)。
> VGSC との親和性から,use-dependent, state-dependent に分類される(3)。
: Use-dependent は,発火が続くと VGSC との親和性が増大する薬品である。
: State-dependent は,resting, activated, inactivated のいずれかの状態の VGSC に結合する。
Cocaine コカイン
Ropivacaine(motorよりもsensoryに選択性が高い,Clare 2000aR)
Propafenone
Cibenzoline
Moracizine
Pirmenol
GW356194, lamotrigine analog.
4030W92, GW286103
Tocainide
Mexiletine
RS100642, RS-132943
Rufinamide
GW273293(ヒトtype II VGSCに対してlamotrigineの10倍有効,Clare 2000aR)
Co-102862
NW-1015
RWJ-37947
Sipatrigine, 202W92, BIIR-561, BIII-890, NS-7. Stroke treatment.
Tetrodotoxin (pufferfish toxin)
Batrachotoxin (poison dart frog toxin)
Flecainide (不整脈の薬。Clare 2000a)
Quinidine (不整脈の薬。Clare 2000a)
> コカインの代用薬として1905年に発見されたが,vivoでは不安定(1)。
: 1936年,心臓手術の際に局所的に投与すると不整脈を防ぐことがわかった。
: VGSC をブロックすることがわかったのは1959年。
-> Lidocaine の詳細へ
イギリス英語ではリグノカイン lignocaine。Resting, inactivated の両方の状態の VGSC に結合する。
> Inactivated state VGSC に結合し,その状態を安定化する(1)。
: 長期脱分極または発火が繰り返されているときに阻害が起こり,通常の神経活動への影響が少ない。
: 不整脈の薬。てんかんにも効果がある(4I)。
> Voltage-dependent, state-dependent の両方の阻害様式を示す(3)。
: Resting よりも inactivated VGSC に高い親和性を示す。
: 脂溶性が高いため,神経,消化系,心筋の VGSC に結合し,副作用が出やすい。
: 構造の似た analog として,mexiletine が知られている。
> Inactive state VGSCに結合し,その状態を安定化する(1)。
: 長期脱分極または発火が繰り返されているときに阻害が起こり,通常の神経活動への影響が少ない。
: けいれん,てんかんの治療薬。
> 当初は睡眠薬 hypnotic として合成された(1)。
> Phenobarbital alalog で,電気ショックによる痙攣を抑制する(1)。
: Phenytoin, phenobarbital は患者の葉酸 folate 量を減らしてしまうことから,lamotrigine が開発。
> 糖尿病性の神経痛や三叉神経通に有効であるが,副作用も多いと書かれている(3)。
: 副作用として発疹,歯肉の肥大,眼振,奇形発生などが挙げられている。
> Inactive state VGSCに結合し,その状態を安定化する(1)。
: 長期脱分極または発火が繰り返されているときに阻害が起こり,通常の神経活動への影響が少ない。
: けいれん,てんかん epilepsy の治療薬。双極性障害 bipolar depressionにも有効。
> Ca2+ channel (1), NMDA receptor (3) にも作用するので,特異性は低い。
> 動物モデルでは,炎症,神経痛,虚血,鬱病,パーキンソン病 Parkinson's disease などに有効(1)。
局所麻酔薬。作用時間は長い。運動神経遮断作用が強いが、知覚神経の回復が早いので、疼痛治療には向かない(Wiki)。
Etidocaine を使って,ラット VGSC の機能を詳しく調べた先駆的な論文がある(3)。エチドカインのページで詳しく解説している。
> Inactive state VGSC に結合,てんかんの治療薬として使われる(1)。
> 三叉神経痛 trigeminal neuralgia の治療薬として,1970年に承認された(3)。
: ミクロソームの酵素を誘導するため,他の薬の作用にも影響するかもしれない。
> 作用の範囲が広いのが特徴の抗てんかん薬(3)。
: VGSC のほか,電位依存性L型カルシウムチャネルや AMPA 受容体を抑制する。
: GABAA受容体の機能を増強する作用もある。
製品名は,アリスリズム,サンリズム,ピルジニク,リズムコート,タツピルジンなど。
> 電位依存性Naチャネルとの結合解離の速度が遅く,抑制作用が I 群の中で一番強い(2)。
> Kチャネルに作用しないので,QTには影響を及ぼさない。上室性・心室性不整脈に有効である(2)。
> Nav1.8 に特異性の高いブロッカーで,電位依存的なブロックを示す(3)。
: Resting よりも inactivated state に親和性が高い。
: 全身投与により spinal neuron の自発および刺激による発火が抑制される。
> Nav1.8 に対する選択性が高く,blocking activity は lodocaine, benzocaine よりも高い(3)。
> Merck が開発した Nav1.7 に選択性の高いブロッカー(3)。しかしNav1.8, Nav1.5 にも結合。
> ラットに食べさせると,神経の発火を抑制する(3)。
> Resting よりも Inactivated VGSC に親和性が高いブロッカーである(3)。
: Nav1.7, Nav1.8 に選択的に作用する。神経痛の緩和作用が報告されている。
: 脳 brain には届きにくく,中枢神経系への副作用は弱い。
> Rat sensory neuron で,TTX-resistant current をブロックする(3)。
: Nav1.8 をブロックするという報告もある。
: 類縁体には,Nav1.2, Nav1.5 をブロックするものもある。
> Inactivated, resting 状態の VGSC を区別でき,slow inactivated state に結合する(3)。
: Nav1.3, Nav1.7, Nav1.8 を選択的にブロックし,carbamazepine, lidocaine よりも効果が高い。
> VGSC の neurotoxin binding site 2 に結合する(3)。
2-[4-(4-Chloro-2-fluorophenoxy) phenyl]-pyrimidine-4-carboxamide の略。
> Broad spectrum, state-dependent Na channel broker (3).
: 1000 times potent, 2000-fold faster binding kinetics than carbamazepine and lamotorigine.
> TTX-sensitive channel よりも,TTX-resistant channel に親和性が高い(3)。
: Nav1.3, Nav1.8, Nav1.9 に選択性がある。NMDA受容体にも結合する。
> Binds to site 2 of sodium channel (3).
: Carrageenan による神経痛に効果があることが報告されている。
> 31アミノ酸から成る marine cone stail 由来のペプチドで,Nav1.8 に親和性が高い(3)。
: 他の VGSC よりは,少なくとも10倍 Nav1.8 に親和性が高い。
Lingamaneni and Hemmings 2003a. Differential interaction of anaesthetics and antiepileptic drugs with neuronal Na+ channels, Ca2+ channels, and GABAA receptors. Br J Anaesth 90, 199-211.