テトラメチルシランは,右のような構造をもつ化学物質で,NMR の標準物質として使われる(1)。主な理由は以下の通り。
> NMR は TMS のプロトンの共鳴周波数が切りのいい値になるように作られている(1)。
> 「500 MHzのNMR」とは,TMS の proton が正確に500 MHzで共鳴するような磁場をもつ機械のこと(1)。
> なお,500 MHz は 11.7 T(テスラ,磁束密度の単位Wb/m2)に相当する。
> 1% TMS in CCl4を1滴入れるぐらいでちょうどいい。
> 基準物質の添加量は,そのピークが試料ピークより低いぐらいが適正。
> TMS は水に不溶である ため,DSS や TSP-d4 などがかわりに用いられる(1)。どちらも構造は似ている。
: DSS = 4,4-ジメチル4-シラペンタンスルホン酸ナトリウム,(CH3)3-Si-(CH2)3-SO3-Na+
: TSP-d4 = 2,2,3,3-テトラデューテリオ-4,4-ジメチル-4-シラペンタンスルホン酸ナトリウム,
(CH3)3-Si-(CD2)2-COO-Na+
現在は,トリメチルシリルプロパン酸(trimethylsilyl propanoic acid, TMSP, TSP)が水溶液の NMR の標準物質としてよく使われるようである。